ついに手に入った魚。アジ科・ギンガメアジ属のカッポレである。これまで何年も探してきた魚であり、とてもうれしい。
この魚は突き漁で漁獲されたもので、体側に大きな傷がついているが、これは耳石を壊さないようあえてこの部分を狙っていただいたものであり、心遣いがうれしい。また事情により獲ってからどうしても日数がかかってしまうということで、内臓も抜いてくれていた。漁獲していただいた方に感謝です!
分布域は三大洋に及ぶが、とくに海洋島の周辺に多いようである。日本では伊豆-小笠原諸島、琉球列島でそのほかではまれである。大西洋ではサンゴ礁域の深場でもそこそこ見られるらしい。ポイが記載していることからもわかるように、タイプ産地は大西洋のキューバである。おそらく一生を海域で過ごし、ギンガメアジやロウニンアジのように河川に入るようなことはないと思われるものの、幼魚の個体が得られていないらしく、どのような一生を送るのかわかっていないところもある。成魚はほかのギンガメアジ属とは高い鰭、黒い稜鱗(ぜんご、ぜいご)、などによって容易に識別できるだろう。しかし幼魚はどんなものかわかっておらず、したがってギンガメアジ属のほかの種との識別は容易ではない。
かつてカッポレによく似たものに、クロヒラアジCaranx ishikawai Wakiya, 1924というのがいた。これは現在ではカッポレのシノニムとみなされている。背鰭と臀鰭前部葉状部が長く、尾鰭上・下葉が長く、またカッポレと比べると歯が大きいとされている。歯の写真を撮ってみたが、クロヒラアジの原記載文献にアクセスできていないので、違いは分からない。なお、再びこの種が有効種とされても、この魚に「クロヒラアジ」という標準和名をつけることはできない。クロヒラアジという種標準和名は、別の種のアジの標準和名となっているためである。
伊豆・小笠原諸島、琉球列島などでは食用になり市場に出るものの、九州以北での流通はほとんどなく長いこと入手することはできていなかったものであった。今回のカッポレの身はご覧の通りで、よく脂がのっていた。刺身とカルパッチョにして食べたが、どちらも美味しかった。
なお、このカッポレを入手したことにより、日本産のギンガメアジ属をすべて入手、すべて食したことになった。しかしながらイトウオニヒラアジ、オニヒラアジ、カッポレの3種の幼魚は入手できておらず(そもそもカッポレの幼魚がどのようなものなのかもわかっていない)、逆にカスミアジの青い斑点が多数入る成魚は入手出来ていない。まだまだギンガメアジ属をめぐる旅は続きそうである。
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