最後に私の説としてあげたいのは、『もともとのアマテラスは天神族の馬族ではなく、原日本人、つまり北上して中国大陸に住みつき鳥族となった殷人と同族の、日本列島に住みついたもっと蛇族の特性を持つ海津人(わたつじん)だった』というものです。そうだとすればアマテラスが稲を授けたというのも筋が通ります。馬族のアマテラスが稲と関連があるはずありません。
『高天原』がどこなのか、一般に馬族が渡来した朝鮮半島から大陸のどこかだろうとされて来ましたが、元々の『タカマガハラ』という言葉がワタツ族の言葉だったらどうでしょうか。アメノミナカヌシから始まりイザナギ・イザナミ、アマテラスと高天原(タカマガハラ)などの単語がワタツ族の言葉で連用されたのだとしたら、私達の歴史はもっと分かりやすくなります。
イザナギ・イザナミによって生みなされた我が大八島の国々・日本は約三万年前から蛇族の縄文人、つまりワタツ族の国でした。そして長い長い三万年の間ワタツ人特有の文化を醸成しました。そこに私達日本人が生きる上で最も大切な『日本語』の起源があります。何よりもアメノミナカヌシを始めとする一連の言葉、神名として採用されている様々な言葉は、私達の日本列島原住民ワタツ族の言葉であり、それが楢崎・宇野両先生がカタカムナ人と呼ばれる人々の言葉であったのだと私は信じています。
そこに多分夏(あるいは周)の滅亡により牛族(後にカタカムナ人の言葉からスサノオという名前を当てられた首長に代表される一族)が、殷の滅亡により犬族を引き連れた鳥族(邪馬台国原族で同じく多分ツクヨミという名を首長に当てた)がやってきました。スサノオが三貴子の中で最後に生まれたことになっていますから周の滅亡後だったのか、それとも遅れてやってきたのか分かりませんが、どちらにしろ一万年以下の数千年単位での昔の事件です。スサノオに代表される牛族は半島を陸経由ではなく(つまり対馬壱岐経由ではなく)主に日本海を渡って出雲をはじめとする日本海側に広く辿りついたと思われます。
古事記ではイザナギノミコトから海を治めよとの命令をお受けになったスサノオはそれを嫌がってアマテラスの高天原に行かれ狼藉を働かれ追放されます。それで地上に降りて来られて蛇族の象徴大蛇(おろち)をお退治になり出雲の国をお建てになったとされています。真相は原住民族アマテラス(ワタツ族)の蛇を実際に投げ飛ばしたのです。八岐大蛇ですから八カ国を征服なさったのかもしれません。これだとスサノオの八岐大蛇退治の脈絡に無理がないどころか、はっきりそしてすっきりすると思います。これが出雲の神話の原型で、天孫降臨とは別系統のお話です。
鳥族殷人の亡命劇が高千穂に降臨した天孫神話の原図で、殷帝国滅亡後の紀元前十世紀(3000年前)頃の事件です。猿田彦がお迎えに来ます。(川崎先生によると、サルは塩で、牛族の一派らしいのです。こちらの場合は九州に先住していた牛族もお迎えをしたことになっています。海幸山幸でふれたように、九州の牛族はすでにワタツ族と混じっていたのかもしれません。そしてそれに納得できなかったのがスサノオ一派なのかもしれません。)この鳥族と犬族はワタツ族と結婚宥和政策をとって邪馬台国を建てました。もともと鳥族とは近かったのです。これが山幸彦が言葉(呪文)と統治権(治水権)を受け継いだお話です。しかし『日本語』を採用した人々は基底言語が同じだったとはいえ、何万年と醸成された言葉をすぐに完全には理解できませんでした。使っているうちに分かってくるものもありますが、段々曖昧にもなっていきました。これは現代の私達が使っている日本語を考えるとわかると思います。何となくわかるような気がする言葉がこんなにたくさんある言語を私達は使っています。
邪馬台国は既述の通り神武天皇へ発展します。そして同体化したアマテラスの正統性を持って蛇族の地出雲を奪還するべく東征されるのです。それから時代を経て濊貊(わいべく)から馬族がやってきます。それが紀元前四、五世紀から百済成立以前までの間のどこかだと思います。少なくとも魏志倭人伝の頃には女王国の一部に末蘆国という馬族の国名があります。馬族は世界で最後に犬族から分離派生した部族です。しかしながら私は、天神族の馬は邪馬だと思っています。
(時が移って、通説の通り、大和朝廷は馬族が大王を立てることになったとしましょう。それでも海幸山幸の昔話が重層的に表しているように、馬族も大和の国を『易姓』することなく継承し『捨姓』することで万世一系の皇統(天神族)を融解創造されました。スサノオが投げたのは蛇でしたが、ここでアマテラスを馬族の祖、高天原を馬族の故郷とし、そこで馬を投げたことにしたのだと思います。)
これは今のところ私の仮説でしかありませんが、そうだとすると私達の歴史はずいぶんすっきり、すんなりと腑に落ちます。ワタツ族の住む日本列島に順番はまだ不明ですが、様々な時代と地方から鳥族と犬族、牛族、馬族がそろって、私達混血の日本人が出来上がりました。しかし大陸や朝鮮半島とは違って、そこにはワタツ族のカタカムナという大和の源泉があったのです。ですから今日の日本人はワタツ族という錬金術師の坩堝で融和してできた大和族です。そしてその血統の受け渡しは『カタカムナ語』、つまり現代に生きている国語の『日本語』によって行われてきたのだと思います。
『カタカムナ』は容易に研究の対象となる性質のものではありませんが、日本人らしさを生み出す元となったものです。なぜなら人間らしさはみな言語によって培われてきたものだからです。ですから日本人の特性を守りたいと思うならば、日本語を大切に守っていくこと以外に何もありません。それによって作り上げられた日本の『大和(だいわ)』の歴史が確かに世界にありえない奇跡であったことを知ることが、自分と日本を知ることになり、以て世界の人々に貢献できるのではないかと思います。私達は今日本の心をはっきりと知る必要がある危機の時代に生きています。私達は一人一人日本人として自分の人生を生きて行こうとの確認と決意を新たにする必要があると思います。繰り返し表明したいと思いますが、神話とはその民族の歴史と言語だと思います。
それでは今日も:
私達は横田めぐみさん達を取り戻さなければならない!!!