日本語は美しい叙情詞(こんな言葉があるかどうかわかりませんが)を持っています。桜貝の歌はその典型のような歌だと思います。
うるわしき桜貝一つ 去り行ける君に捧げん この貝は去年(こぞ)の浜辺で我ひとり拾いし貝よ ほのぼのと薄紅染むるは わが燃ゆる寂し血潮よ はろばろと通う香りは 君恋うる胸のさざ波 ああなれど わが想いははかなく うつしよの渚にはてぬ
この二番の『ほのぼの』と『はろばろ』という言葉が胸に迫ってきます。この音の響きは、『栂の木の いやつぎつぎに』由来の日本人の感性だろうと思います。古事記の中で出会った歌で音の繰り返しの単語がどんなに人の心を打つか、私にとって印象的な歌があります。
はしけやし 我家(わぎえ)の方よ たたなづく 青垣山ごもれる
日本武尊の臨終の御歌です。重層的に幾重にもたたなづく青垣の山々に取り囲まれている、あの場所あの場所に思い出もたたなづく・・・・・・あの美しい我が家がある方はあっちかなあ。故郷を愛するお心がひしひしと伝わってきます。これが音を繰り返す効果だと思います。この美しい『たたなづく』 という言葉が大好きです。この音で忘れれられない歌になりました。