鍋料理の中で、最も安上がりなのが湯豆腐だろう。豆腐以外には、少量の削り節、おろし生姜、刻みネギなどの薬味と醤油かポン酢があれば足りる。しかし庶民的なはずなのだが、この湯豆腐が、ある意味では最も高級、つまり上品なのである。
さて、「命の果ての薄明かり」だが、「作者の命の終末期」とも「死後の世界」の薄明かりを作者が想像している、とも受け取れる。ひらがなにしているのも、その辺のあいまいさを狙っているのではないか。
どちらかというと、前者の、生きてきた我が人生を振り返り、死を間近に控えた諦観の中にいる、というのでいいのかもしれない。
料亭かどこかの部屋の薄明かりであるのかもしれないが、人生のロウソクの炎が消えかかっているそんな薄明かりも想像される。
しかし、作者が「死後の世界」を想像しているのではないか、というのも魅力的な見方だと思う。
劇作家でもあった作者の、緻密に計算された演劇的な句と言えないだろうか。