(せいやまつ ちちのてづくり バイオリン)
聖夜とは、クリスマス・イブのこと。
西洋の楽器であるヴァイオリンを手作りすることはとても珍しいこと。まして「父の」となると、時代的にも大正か昭和、昭和でも戦前であろうし、これは稀有に近い。当時、輸入品は高価であったろうし、なかなか手に入らなかったであろうことも推測される。
そういう貴重な形見である手作りヴァイオリンを見るたびに、作者は様々なことを思い出すのだ。例えば父の仕草、父の言葉、賛美歌を弾く姿、その音色、ミサの祈り、・・・・・記憶は尽きることなく巡り始める。
信徒でもないのに馬鹿騒ぎする戦後のクリスマスと違い、当時のキリスト教徒のそれは、実に真摯であり、敬虔であったはずだし、そんな、聖夜をヴァイオリンと共に作者は待っているはずだ。