世の中には、「犬派」と「猫派」がある。というのは、たぶん10数年以上前のことだが、テレビ(たぶんNHK)で犬猫論争番組があり、ある青年が犬養道子さんに「あなたは犬養(いぬかい)なのに何故猫派なんだ」という無意味な反論に大爆笑が起こったのを思い出したからだ。だから猫が犬ふぐりを踏んづけている掲句は、猫派にとっては拍手喝采だろう。
しかし、私は犬派である。猫に踏まれることは慙愧に耐えない。せめて、犬に踏ませたいと思って「踏みつけて犬通りけり犬ふぐり」という句を作った。句の善し悪しは別として、これは2匹の犬を飼っている男の、真白な事実の句ではある。