それにしても、再三、私は2人の問題に如何して自分が巻き込まれるのか不思議でしょうがありませんでした。
この時点で私には関係ないからと強く言って、2人の仲裁めいた事を断ればよかったと思います。
私には、きー君とFさんの仲が不思議な出来事としか思えませんでした。本当に全く予想もしていなかった出来事でした。
Fさんのああいう状態を、『恋は盲目』というのだなぁと、教室に戻って来た私は溜息を吐いて少々げんなりしていました。
大体、きー君の事はよく分からないのよ、もしかしたら私の事を嫌いなんじゃないかしら?
過去の2、3の出来事を振り返って、私はきー君に好かれるどころか、
好意を持たれてさえいないのではないか、と思うのでした。
きー君の私への態度は何時も、表面は一応にこやかですが、決して心の内を見せない隙のない人のようにも私には思えて、
どちらかと言うときー君は、私にとって関わりあいたくない相手という感じで6年間を過ごして来たのです。
それが、Fさんのせいでこちらから、かなり立ち入った事を聞く事になってしまいました。
私自身は関わり合いたく無かったきー君、この先のきー君との関係に、何やら暗雲めいたものを感じる私です。
と、ここで、暗雲の方は考えたくないと、私はFさんの方へ考えを変えます。
私は先ほどのFさんの言動に怒ってはいましたが、それも恋する乙女のなせる業と思うと、
同性としてFさんが微笑ましくもありました。
あんな風に、好きな人が出来るとその人に一途になれるものなんだなぁと、
形振り構わずの状態に近い小学生の純粋さに打たれてもいました。
同い年なのに、私にはまだほど遠い世界のような気がする。
もう恋愛感情がある同級生がいるんだ。
その他の同級生はどうなんだろうか、と考えて教室内の男女の生徒を見回したりしました。
私は早熟な方ではなく、どちらかというと晩稲の方でしたから、同級生のこの木の芽時には新鮮な驚きがありました。
今までが鈍感だったんでしょうか。クラスの中にはいろんなカップルが増えていたのかもしれません。
いつの間にかFさんが戻り、きー君も教室に戻って来ていました。
『ほんと、2人が仲がいいなんて全然気づけないな。』
と思います。
こうやって教室だけで見ていると、2人には全く接点が無いように見えます。
授業が始まる前に、Fさんは私に
「Junさん、駄目じゃないの、付属に行くの勧めちゃ。」
と言います。
私はそんな気はなかったんですが、先程きー君に話した話の流れからいくとそうかなと思います。
だから、時間を掛けてゆっくり2人(もちろん、きー君&Fさん)に良いようにと思っていたのよ。
と、話が途中で終わった事をFさんに告げます。
そうです、一方的にFさんの良いようにしていいものかどうかという問題がありますから、
きー君の気持ちも聞いてみないと、と両方の為に良いようにと思うのです。
また、昼休みにでもゆっくり話してみてよ、そうFさんに言われて、そうね、
Fさんは友達だし、きー君は近所だし、近所のよしみという言葉もあるからと、私はいいわと答えます。