実は、と、私は話します。
「入学して直ぐぐらいから、クラスの男子が意地悪でね。」
当時は苛めという言葉がありませんでした。嫌がらせという言葉も私にはピンと来ないものがありましたから、
全て意地悪です。
元々の小学校の男子はどうなんだ?と父が尋ねるので、そっちの方はそんな事は無いと答えます。
向こうから来た男子が何だか私の事で騒いで意地悪なのだ、と話します。
父はそうかと言って、『人の噂も七十五日』、その内収まるだろうから、
もうちょっと様子を見たらどうだと言います。
そうねえ、いったん収まりかけたんだけど、また何だか意地悪が復活してね、
前の時は向こうの男子全員が騒ぎ立ててた感じだったけど、
今回は1部だけなんだけど、前より物言いがしつこくて酷いのよね。
しつこい理由も分からないのだと言って、意地悪される覚えが全く無い事も話します。
最初の騒ぎははっきり私の名前から来て、それを面白おかしく囃子立てている感じでしたが、
2回目の苛めの波は全く理由がわからないものでした。
しかも数人でしつこく執拗な感じでした。
理由が分かればそれなりに解決策の目途も立つのですが、ただ嫌いだからという感じでやって来るようで、
私は、所謂生理的に嫌だから、という感じをその中心の男子から受けていました。
人の好みはそれぞれなように、人の憎悪もそれぞれといったところなんでしょうか。
ちょっと普通ではない異様さを感じて、私自身あまり関わりたくない感じでした。
それで、ついつい転校したいなと言葉に出たのでした。
「一旦引きかけたという話だったがなぁ」
と父が言うので。
お父さん知っていたのと聞きます。
うん、ちょっと言ってきた人がいてね、と父。
私は何だ知っていたのかと思いながら、私もその内収まるだろうと父には黙っていたと話します。
初めの意地悪の方は自分で解決出来そうだったから、そう気に病むほどでも無かったと話します。
でも、2回目の物は如何してよいかわからないし、どうも意地悪してくる男の子が変なのだ。
何で私に意地悪したいのかが全然わからなくて、ただ意地悪したいからしているだけに見えるの、
根っからの意地悪好きで、私に意地悪しても何も起こらないと思っているみたいなの。
と、話します。
私が転校したら懲りるんじゃないかしら。
このままじゃ勉強もできないし、困ってしまうわと、父を横目で見ます。
父は勉強の為というと、割合無条件で何でも聞いてくれましたから、私は内心ウフフと思います。
「お前、お父さんのツボを心得てるな。」
と、父は小声でつぶやいていました。