ウッド・ショックの現状を伝える動画をどうぞ。
住宅建築用の木材需要が急増して生産が追い付かず、価格が急騰する現象だ。米国の住宅需要が盛り上がり、米国の建材用木材の不足がやがて他国や日本も直撃し、日本でも今から新たに住宅を建てようという施主、工務店側ともに大変なことになっている。ウッドデッキの改修工事を見積もってもらったが、高過ぎて止めたなんて人もいる。木材を使った建物や外構工事の価格が予想外に高くなってしまうのだ。「ウッド・ショック」っておそらく和製英語なのだろうねえ。米国だと「ランバー・ショーテッジ(木材不足)」等と言っているようだ。
動画に出て来るベイマツ(米松)は日本に大量に輸入され、日本の木造住宅建築を支えている。現地ではダグラス・ファーと呼ばれる樹種だ。私の自宅や原村の山荘の柱や梁も、ダグラス・ファーだ。安価で、使いやすい木材である。
米国ではCOVID-19で在宅勤務が急増し、それなら都市に住んでいる必要なんてないわ♪といそいそと郊外住宅を買い求める人が増え、しかし住宅の供給って急には増やせない。以前から申し上げているように、米国では住宅売買というと、圧倒的に中古住宅の取引が多い。だったら新築の取引を増やせばいいじゃん!となるが、それもまた限度がある。もともと住宅売買取引における新築取引の割合が低いことに加え、工務店も大工さんも急には増やせないからね。さらに経済の復活が国としても重要なので、中央銀行は政策目標の短期金利を超低水準に据え置き、一方で長期の国債やモーゲージ債をせっせと購入しているので、長期金利もあまり上がらない。したがって住宅ローン金利が借りやすい比較的低水準にとどまった状態が昨年から続いていて、住宅需要は盛り上がりやすい。
では、米国の住宅価格上昇はそんな急に始まったのか?というと決してそうではない。下のグラフをご覧ください。

【Source: S&P、Investing.com】
たしかに昨年から住宅価格指数は上昇率を上げている。しかし上昇自体は10年前から延々と続いている現象だ。
現在の米国の住宅価格は、10年前の約2倍なのである。ローン金利水準は低いが、借入金額がどんどん増えるので、住宅を買えない層はますます買えなくなっている。しかし富の偏在は酷くなっているので、自分が住まない住宅を投資用に購入する富裕層は増えている。
「そうか、米国の住宅価格は2倍か・・・。いいなあ、日本と違うなあ」と日本の持ち家の人は思うかもしれない。「人口も増え経済も成長する国って良いものだなぁ」と。
住宅だけじゃない。株式市場も元気が良い。昨日朝の米国(日本時間では昨夜)で6月の雇用統計が発表され、同月の非農業部門雇用者数の増加が市場の平均的予測を大きく上回るものであることがわかった。逆に失業率は予想に反して上昇した。実際雇用されている人の数が増え、今雇用されてはいないが雇用されたいという意欲を持つ人も増えているということなのでしょう。
その雇用統計に反応して昨日の米国株式市場(の代表的指数であるS&P500)は朝から夕方まで上げ続け、最後にわずかに下がったものの(画像は最後に少し下がる直前の時間帯に撮影されたもの)キレイな右上がりだ(↓)。

【Source: S&P、Yahoo! Finance】
このグラフ(↑)は昨日1日のみの動きを示したものだ。
しかし米国株式市場の相場の上昇も今に始まったものではなく、もう12年も上げ続けだ。
こちら(↓)をご覧ください。

【Source: S&P、Yahoo! Finance】
米国の銀行が本来なら住宅ローンを貸すべきではない人達にまで貸しこんでしまい、それがやがて金融危機へとつながった。
それにより株価が暴落しおよそ直近の高値の半分になり、底を打ったのは12年前(2009年)の話である。そこから現在までで、米国の株価(S&P500)は6倍ほどになっている。わずか12年で6倍。このS&P500のETF(米国ドル建てのニューヨーク上場投信)は誰でもいつでも楽天証券でも野村證券でも買える。ネットで買える。これもまた以前から申し上げている通り、運用手数料はタダに近い。そしてここが重要なんだが、いつでも売れる。毎営業日、解約可能だ。
今から新たにこれを買おう!と私は言っているわけではない。12年で6倍になったものは、今年か来年かいつなのか分からないが、またきっと何か嫌なことがありそうだと考えるのが普通だろうからね。
私が驚くのは、こういう時期にプライベート・エクイティ(未公開株式)に投資をどんどん増やして行く日本の投資家が多いことだ。未公開の株式ってくらいだから、簡単には売れず、10年あるいはそれ以上の単位で延々と投資するものだし、その投資先企業は玉石混交である。平均すれば高いリターンを得られるが、問題はタイミングで、悪い時期にその投資を始めるとその後長期にわたりたいへん辛い経験をすることになる。そのことを以下の資料で確認しましょう。
プロの投資家の中の最高峰、巨大なカルパース(カリフォルニア州職員の年金基金)の過去のプライベート・エクィティ投資の結果が、昨年の同基金のレポートで見られる。

【Source: CalPERS】
字が小さくて恐縮だが表の最初の行にあるファンド投資の案件で言うと、①が投資開始年で2009年。②が当初カルパースが投資することを決めた金額で5億ドル。③がこれまでに投資した金額合計で4億9,500万ドル。④がこれまでに投資案件から回収できた金額で2億7,800万ドル。⑤がこれまでに回収した金額と、まだ投資継続中の企業の未公開株式の時価合計で7億2,600万ドル。一つ飛ばして、⑦が⑤÷③で、つまり投資したおカネが今何倍になっているかという評価である。
ここにあるファンドの多くが金融危機の前、あるいはそれ続く最中に投資が開始されたものである。そういう時期に投資が開始されると、その後ずっと困ったことになる。
- その投資から配当がなかなか出て来ない
- 未公開株式という性格上長期にわたり解約も出来ない
- 開始から10数年も経った今でもその回収額+投資継続中の株式の評価額は、これまでに投資した金額の1倍ちょっとに過ぎないものが多い
- しかもこういうファンドは、運用会社に対しかなり高い手数料を払う(カルパースの場合は、運用会社を使わず自分でも直接的に投資するが)。
なんとも無残な投資だ。
つまりプライベート・エクィティ投資って、まずはタイミングは重要なのだ。私なら恐ろしくて今から新たにプライベート・エクィティを買うなんてことは出来ない。
いつでも解約可能で、運用手数料もタダに近いS&P500のETFを買う方が、まだよほどいいよねえ。でも、今から新たにやるのは慎重にしましょうね。なんか怖い。12年で6倍って不気味だ。
住宅建築用の木材需要が急増して生産が追い付かず、価格が急騰する現象だ。米国の住宅需要が盛り上がり、米国の建材用木材の不足がやがて他国や日本も直撃し、日本でも今から新たに住宅を建てようという施主、工務店側ともに大変なことになっている。ウッドデッキの改修工事を見積もってもらったが、高過ぎて止めたなんて人もいる。木材を使った建物や外構工事の価格が予想外に高くなってしまうのだ。「ウッド・ショック」っておそらく和製英語なのだろうねえ。米国だと「ランバー・ショーテッジ(木材不足)」等と言っているようだ。
動画に出て来るベイマツ(米松)は日本に大量に輸入され、日本の木造住宅建築を支えている。現地ではダグラス・ファーと呼ばれる樹種だ。私の自宅や原村の山荘の柱や梁も、ダグラス・ファーだ。安価で、使いやすい木材である。
米国ではCOVID-19で在宅勤務が急増し、それなら都市に住んでいる必要なんてないわ♪といそいそと郊外住宅を買い求める人が増え、しかし住宅の供給って急には増やせない。以前から申し上げているように、米国では住宅売買というと、圧倒的に中古住宅の取引が多い。だったら新築の取引を増やせばいいじゃん!となるが、それもまた限度がある。もともと住宅売買取引における新築取引の割合が低いことに加え、工務店も大工さんも急には増やせないからね。さらに経済の復活が国としても重要なので、中央銀行は政策目標の短期金利を超低水準に据え置き、一方で長期の国債やモーゲージ債をせっせと購入しているので、長期金利もあまり上がらない。したがって住宅ローン金利が借りやすい比較的低水準にとどまった状態が昨年から続いていて、住宅需要は盛り上がりやすい。
では、米国の住宅価格上昇はそんな急に始まったのか?というと決してそうではない。下のグラフをご覧ください。

【Source: S&P、Investing.com】
たしかに昨年から住宅価格指数は上昇率を上げている。しかし上昇自体は10年前から延々と続いている現象だ。
現在の米国の住宅価格は、10年前の約2倍なのである。ローン金利水準は低いが、借入金額がどんどん増えるので、住宅を買えない層はますます買えなくなっている。しかし富の偏在は酷くなっているので、自分が住まない住宅を投資用に購入する富裕層は増えている。
「そうか、米国の住宅価格は2倍か・・・。いいなあ、日本と違うなあ」と日本の持ち家の人は思うかもしれない。「人口も増え経済も成長する国って良いものだなぁ」と。
住宅だけじゃない。株式市場も元気が良い。昨日朝の米国(日本時間では昨夜)で6月の雇用統計が発表され、同月の非農業部門雇用者数の増加が市場の平均的予測を大きく上回るものであることがわかった。逆に失業率は予想に反して上昇した。実際雇用されている人の数が増え、今雇用されてはいないが雇用されたいという意欲を持つ人も増えているということなのでしょう。
その雇用統計に反応して昨日の米国株式市場(の代表的指数であるS&P500)は朝から夕方まで上げ続け、最後にわずかに下がったものの(画像は最後に少し下がる直前の時間帯に撮影されたもの)キレイな右上がりだ(↓)。

【Source: S&P、Yahoo! Finance】
このグラフ(↑)は昨日1日のみの動きを示したものだ。
しかし米国株式市場の相場の上昇も今に始まったものではなく、もう12年も上げ続けだ。
こちら(↓)をご覧ください。

【Source: S&P、Yahoo! Finance】
米国の銀行が本来なら住宅ローンを貸すべきではない人達にまで貸しこんでしまい、それがやがて金融危機へとつながった。
それにより株価が暴落しおよそ直近の高値の半分になり、底を打ったのは12年前(2009年)の話である。そこから現在までで、米国の株価(S&P500)は6倍ほどになっている。わずか12年で6倍。このS&P500のETF(米国ドル建てのニューヨーク上場投信)は誰でもいつでも楽天証券でも野村證券でも買える。ネットで買える。これもまた以前から申し上げている通り、運用手数料はタダに近い。そしてここが重要なんだが、いつでも売れる。毎営業日、解約可能だ。
今から新たにこれを買おう!と私は言っているわけではない。12年で6倍になったものは、今年か来年かいつなのか分からないが、またきっと何か嫌なことがありそうだと考えるのが普通だろうからね。
私が驚くのは、こういう時期にプライベート・エクイティ(未公開株式)に投資をどんどん増やして行く日本の投資家が多いことだ。未公開の株式ってくらいだから、簡単には売れず、10年あるいはそれ以上の単位で延々と投資するものだし、その投資先企業は玉石混交である。平均すれば高いリターンを得られるが、問題はタイミングで、悪い時期にその投資を始めるとその後長期にわたりたいへん辛い経験をすることになる。そのことを以下の資料で確認しましょう。
プロの投資家の中の最高峰、巨大なカルパース(カリフォルニア州職員の年金基金)の過去のプライベート・エクィティ投資の結果が、昨年の同基金のレポートで見られる。

【Source: CalPERS】
字が小さくて恐縮だが表の最初の行にあるファンド投資の案件で言うと、①が投資開始年で2009年。②が当初カルパースが投資することを決めた金額で5億ドル。③がこれまでに投資した金額合計で4億9,500万ドル。④がこれまでに投資案件から回収できた金額で2億7,800万ドル。⑤がこれまでに回収した金額と、まだ投資継続中の企業の未公開株式の時価合計で7億2,600万ドル。一つ飛ばして、⑦が⑤÷③で、つまり投資したおカネが今何倍になっているかという評価である。
ここにあるファンドの多くが金融危機の前、あるいはそれ続く最中に投資が開始されたものである。そういう時期に投資が開始されると、その後ずっと困ったことになる。
- その投資から配当がなかなか出て来ない
- 未公開株式という性格上長期にわたり解約も出来ない
- 開始から10数年も経った今でもその回収額+投資継続中の株式の評価額は、これまでに投資した金額の1倍ちょっとに過ぎないものが多い
- しかもこういうファンドは、運用会社に対しかなり高い手数料を払う(カルパースの場合は、運用会社を使わず自分でも直接的に投資するが)。
なんとも無残な投資だ。
つまりプライベート・エクィティ投資って、まずはタイミングは重要なのだ。私なら恐ろしくて今から新たにプライベート・エクィティを買うなんてことは出来ない。
いつでも解約可能で、運用手数料もタダに近いS&P500のETFを買う方が、まだよほどいいよねえ。でも、今から新たにやるのは慎重にしましょうね。なんか怖い。12年で6倍って不気味だ。