碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

ドラマ『風のガーデン』の終了

2008年12月19日 | テレビ・ラジオ・メディア
昨夜、ドラマ『風のガーデン』終了。

ついに白鳥貞美(中井貴一)が亡くなった。ドラマの中の時系列で2008年10月1日、享年46。

病院ではなく、故郷の、自分が育った家で、家族に見守られての最期だった。

長い間、バラバラだった家族。それが、貞美の最期を一緒に闘うことで、家族が初めて結ばれたのだ。

自分の死期を知ってからの貞美が、精神的にも辛かったとは思うが、急に「いいひと」になったようで、やけにきっちり悟ってしまったようで、それが少し気になっていた。

でも、倉本さんは、「こんなふうに最期の時間を過ごせたらいいんじゃないか」と我々に見せてくれているんだなあ、とも思い、「さて、自分ならどうするか」を毎回考えずにはいられなかった。

「人は最期に何を求め、
 何処に帰って行きたくなるのだろう」

ドラマ開始直前に緒形拳さんが亡くなって、緒形さん演じる貞美の父・貞三が出てくるたび、「ああ、現実の緒形さんはもういないんだ」と複雑な感慨があった。

たとえば、昨夜の最終回の中で、貞美が貞三に聞く。

 「お父さん。死後の世界ってあると思いますか」

貞三は「判らんな」と答える。そして、こう続けるのだ。

 「でも、どうも最近、あるように思えて来た」

これは、もしかしたら倉本さん自身の“願い”だったのではないか。

そして、この台詞、緒形さんはどんな思いでしゃべっていたのだろう。

最終回のタイトルは「ナツユキカズラ」。その花言葉は、”今年の冬に、降るはずの雪”だ。

風のガーデン
倉本 聰
理論社

このアイテムの詳細を見る