碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

私が好きだった時代劇

2009年07月02日 | テレビ・ラジオ・メディア

TBSで再放送されている『水戸黄門』が、ちらっと目に入った。

その瞬間、ふと思い出したのは、懐かしい時代劇のことだ。


面白い時代劇の第1条件は魅力的な主人公。

次に、複雑すぎない明快なストーリー。

そしてこれが必須なのだが、名脇役の存在である。

少年時代、毎週必ず父親と一緒に見ていた『素浪人 月影兵庫』は、思えばこれらの要素をすべて満たしていた。

放映が1965~66年、そして67~68年。

かつてのNET(現 テレビ朝日)。

素浪人とは「無一物の浪人」のことであり、浪人をさげすんだ表現である。しかし、金も家も家族も持たぬ月影兵庫(近衛十四郎)は、それゆえに自由人だった。

好きな街道を歩き、適当な宿場でわらじを脱ぎ、事件に巻き込まれれば弱きを助け強きをくじく。自由で、武骨で、しかも腕が立つ大人の男。私も憧れていた。

この番組での脇役といえば、なんてったって焼津の半次(品川隆二)だ。

陽気でおっちょこちょい。剣の腕前はハンパなのに強気。困ったら、あの鼻の穴を大きくふくらませた顔で「だんなあ~」と兵庫に泣きつく。

でも、憎めないのだ。画面の中に半次がいないと、やけに寂しいのだ。

もちろん兵庫が見事な剣をふるう場面は見せ場だったが、同様に、いやそれ以上に兵庫と半次の掛け合いが楽しみだった。

ついには<半次あっての月影兵庫>とさえ思わせた、インパクトのある名脇役。

嗚呼、焼津の半次は、今も蜘蛛が苦手なままなんだろうか。