山崎豊子さんの長編小説『運命の人』第4巻を読み終わる。
全4巻を読了したわけだ。
これだけの物語を、取材から4年の歳月をかけて完結させたこと自体、いやあ、すごいです。
1971年の沖縄返還交渉をめぐって、当時、毎日新聞の西山記者が政府機密文書を国会議員に流したとして、国家公務員法違反で有罪とされた、いわゆる「外務省機密漏洩事件」をベースにしたストーリー。
最終巻では、主人公の元記者・弓成亮太を通じて、沖縄の“深部”にまで筆を進めている。
戦時中、そして戦後と、日本という国家が、沖縄に対して何をしてきたのか。何をしてこなかったのか。
この長編小説を通読すると、沖縄問題の多くが、ほとんど解決されていないことが分かる。
それでいて、一人の新聞記者の物語としては、どこか“救い”もあって、ほっとした。
現在、山崎さんの『不毛地帯』のドラマ化や、『沈まぬ太陽』の映画化などが進行中だ。
それはそれで楽しみだが、この『運命の人』はテーマがテーマだけに、映像化は容易ではない。
いや、山崎さんは、ドラマや映画では描くことができない、いわば“活字の力”“小説の力”でしか生み出し得ない世界を創り上げた、と言うべきだ。
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