8日が初日となる舞台『君愛せし山河』(脚本:上條逸雄 演出:嶋田親一)の稽古が佳境だ。
稽古場での役者さんたちも、だんだん“役の顔”になってきている。
そんな稽古場の雰囲気が好きだ。
北アルプスが見える谷あいの村に、古くからある旅館「森田館」が舞台。
故・森田悠一郎は旅館の主であり、また地元の子どもたちにとっては大切な“先生”でもあった。
その悠一郎の七回忌に、かつての“教え子”たちが集まってくる。一人一人が「その後の人生」を抱えて・・・。
ドラマと演劇の違いはいろいろあるが、こうして連日稽古を積み重ねていくという作り方は、やはり舞台ならではだと思う。
嶋田先生は確か78歳になるはずだが、年齢など忘れさせるほどお元気で、その的確な指導も見事というしかない。
それは、この芝居の脚本家・上條逸雄さんが早稲田大学時代からの親友であり、これが追悼公演であることと無関係ではない。深い思い入れがあるのだ。
上條さんが手がけたドラマは、「これが青春だ」「でっかい青春」「おれは男だ!」「サインはV」「アテンションプリーズ」「積木くずし」など数えきれないほどだ。
そんな上條さんは、演劇や放送の世界に大きな足跡を残した劇作家・阿木翁助さんの”甥っ子”に当たる。
ちなみに、フジテレビの笠井信輔アナウンサーは、阿木さんの”お孫さん”だ。
そして、今年の8月は上條さんの没後7年に当たり、しかも“叔父”である阿木さんの没後7年でもある。二人は同じ2002年に、70歳と90歳で亡くなった。
まさに、この芝居の設定と同じ「七回忌」なのである。
嶋田先生をはじめとする、阿木さん・上條さんにゆかりの人たちが集まって、今回の追悼公演が行われる・・・。
“人と人の縁”を思わずにいられない。
今回の私の役割である“方言指導”は、ほぼ完了。
信州を舞台にした、信州人だけが出てくる芝居だが、上條さん(信州・諏訪の出身)が書いた脚本は全編標準語だ。
嶋田先生が選んだ「方言にすることが有効な台詞」にのみ方言を使っている。
方言指導担当者としては、できるだけ演じやすいように、主に「語尾」を変化させることで“信州弁らしさ”を出すようにした。
たとえば、「・・・ずら」や「・・・だに」。また、「・・・じゃんかい」や「・・・だでね」といった具合。
若い役者さんたちなど、耳だけで聞いていたら、なかなかの“信州人”ぶりだ。
私が次に彼らを見るのは、公演が始まってから。新宿スペース107の観客席からになる。
人と会うは幸せ!―わが「芸界秘録」五〇嶋田 親一清流出版このアイテムの詳細を見る |