碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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テレビ業界の「下請けいじめ」と総務省の「ガイドライン」

2009年07月10日 | テレビ・ラジオ・メディア
今日の『朝日新聞』朝刊に、「テレビ局の下請けいじめ、是正へ指針 総務省」という記事。

総務省が「テレビ業界にはびこる“下請けいじめ”の取引慣行を是正するための指針を発表」という内容だ。

この指針は「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」。

放送局に、制作会社に対する、以下のような行為の“禁止”を求めるものだ。

(1)番組テーマ曲の著作権譲渡の強要
(2)アニメ番組の制作で一方的に2次利用収益の割合を決める
(3)番組制作会社への強引な出資

これ自体は、確かに禁止すべきことであり、しごく真っ当な話だ。

しかし、それよりもむしろ「まだ、そんなこと、やってるんですか」という情けない思いのほうが強い。


「下請けいじめ」をなくすためにと、総務省と放送局、そして番組制作会社の代表が、今年の初めまで1年間も協議を続けてまとめた“自主ルール”は、どうなっているのか。

3月から先行実施されているルールには、以下の3点が盛り込まれていたはずだ。

(1)制作会社への発注書・契約書の交付と契約金額の記載を義務づけ
(2)番組「買いたたき」を禁止
(3)制作会社が持つ著作権の譲渡強要を禁止

そこには、わざわざ「放送局は制作会社に対して取引上、優位な地位にあることが多い」と明記してあった。

この3月の先行項目に、今回の3点を加えていく“必要”がある、ということだ。

また、新たなガイドラインでは、「制作会社との取引条件の交渉では、著作権の帰属を協議するよう求める」という。

「著作権」は、著作物を製作した者に、自動的に(申請などせずとも)発生する。作り手にとって大切な権利だ。

広告収入が激減している現在、各局が必死で推進しているのが、番組の2次利用をはじめとする「放送外収入」の確保。

その2次利用の際、著作権が大きな意味をもってくる。

双方にとって「著作権の帰属を協議」するのは当然なのだが、それさえきちんと行われていないということだ。

長く制作会社で仕事をしてきたから、という意味だけでなく、「下請け」という言葉も、「いじめ」という言葉も、辛い。

「格差社会」の縮図のような状態のままでは、2次利用に足るような、優れた番組(コンテンツ)も生まれにくいはずだ。

今月中に実施されるというこのガイドラインが、有効に機能することを願いたい。