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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

オミクロン猛威 「風邪」だと対策を緩めたら重症者増で医療が崩壊する

2022-02-03 07:10:46 | 新型コロナウイルス
オミクロン猛威 「風邪」だと対策を緩めたら重症者増で医療が崩壊する
世界保健機関(WHO)感染症危機管理シニアアドバイザー 進藤奈邦子さん

猛威を振るう新型コロナウイルスのオミクロン株への対応について、世界保健機関(WHO)で感染症危機管理シニアアドバイザーを務める進藤奈邦子(しんどう・なほこ)さんに聞きました。宇野龍彦記者



しんどう・なほこ=東京慈恵会医科大学卒、医師、医学博士。専門は内科学、感染症学。2019年イタリア国立スパランツァー二研究所「科学の母」賞受賞。国立感染症研究所主任研究官を経てWHO職員。危険感染症の情報解析、現地調査・対応などを担当。18年から現職

オミクロン株は世界中で大流行し、「ゼロコロナ」で厳しい規制を敷いた中国でも感染が拡大しています。
日本では第5波の感染拡大で、医療が受けられずに自宅で亡くなる人が200人以上に上りました。「風邪みたいなもの」だとして感染対策を緩めてしまえば、重症者が増えて医療が崩壊します。
ワクチンや公衆衛生対策に加え、検査システムの有効活用、早期治療をかなめとし、ウイルスに立ち向かってほしいと思います。


無症状でも強い感染力 オミクロン株 デルタの4倍、会話や呼吸だけでも
南アフリカ、ロンドンやニューヨークなどオミクロン株が爆発的に流行した国や都市では、すでにピークを迎えたところもあります。
これらの地域では人口レベルで感染の飽和状態に達し、減少に転じている可能性があります。もちろん、公衆衛生対策の効果もあると思います。デルタ株が沈静化し、対策を緩めた国も再び厳しい規制を行っています。
まだこのウイルスは変異を続けているのでこれからも新たな変異株が出てくると考えるべきです。




34都道府県で重点措置 コロナ急拡大
【北海道、大阪など新たに18道府県】
新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、政府は25日、北海道、青森、山形、福島、栃木、茨城、長野、石川、静岡、大阪、京都、兵庫、岡山、島根、福岡、佐賀、大分、鹿児島の18道府県に対し「まん延防止等重点措置」の適用を決定。すでに適用されている16都県と合わせて34都道府県に拡大しました。
【保育所327カ所で全面休園】
子どもの感染も広がっています。厚生労働省の集計(20日時点)によると、感染者の発生などで全面休園した保育所等は、27都道府県の327カ所と過去最多になっています。

“風邪と同じ”ではない
従来の変異株は下気道の細気管支から肺胞まで入って肺炎を起こしました。これに対してオミクロン株は、動物のマウス、ハムスターを使った実験では、鼻、喉、気管までの上気道でウイルスの増殖が多いという結果が出ています。
動物実験の結果を人間に適用することには注意が必要です。しかし、示唆されているのは、オミクロン株が主に上気道での感染に移行し、鼻や喉で増殖しやすいために、会話や呼吸をするだけでもウイルスを広げてしまうということです。
いまのところオミクロン株は軽症が多いとされている理由も、上気道主体の感染に変化したために気管支炎や肺炎を起こしにくく、二酸化炭素を排出して酸素を取り入れる呼吸の働きを妨げる状態にはなりにくいからだと考えられます。
オミクロン株は「風邪みたいなもの」なのかというと、それは言えないと思います。
新型コロナの致死率(患者数に対する死者数の割合)は、インフルエンザと比べるとかなり高くなっています(下記)。重症化しにくい若い人たちは軽症で済むかもしれませんが、感染が高齢者や基礎疾患のある人たちに広がると、重症者も死者も増えていきます。
オミクロン株は発症前や無症状の感染者が従来株以上に多くのウ
イルスを出します。感染性が高いデルタ株よりも、少なくとも4倍は感染性が高い。重症化率が低くても、対策を緩めれば感染が爆発的に拡大し、重症者も増えてしまいます。

【インフルより高い致死率】
季節性インフルエンザの国内における致死率は0.02~0.03%。これに対して新型コロナ(第2波、主にべ一タ株)の致死率は約1%。(政府の基本的対処方針分科会の分析)



急激な感染孤大か続く中、駅に同かう多くの通勤者=1月17日、東京都内(ロイター)

後遺症が長引く心配も
新型コロナでは、コロナ自体は軽症でも「ロングコビット」と呼ばれる後遺症に苦しむ方も少なくありません。この点でも風邪やインフルエンザとは異なります。
うつ症状や慢性的疲労感をはじめ、においや味がしないなどの症状、ほかにも、関節痛、頭痛、注意力がなくなるなどの症状が報告されています。
精神的ダメージについては、新型コロナウイルスが神経細胞に影響を与えるためだという科学的根拠が確立されつつあります。
今後、後遺症をきちんとみていける医療の確立が大事です。

子どもの接種について
子どもにワクチンを接種するかどうかについては慎重に考えるべきだと思います。
米国では子どもたちの入院が増えてきて、5歳以上の子どもたちの接種を推奨することになりました。日本でも、厚生労働省が21日、5歳から11歳のワクチン接種を特例承認しました。
子どもたちが家庭にウイルスを持ち込むと、高齢者や重症化リスクのある人に感染を広げてしまう恐れがあるわけですから、学校などの公衆衛生対策は大事です。でも、これは本人の重症化予防が目的のワクチン接種の理由にはなりえません。
今回のワクチンの長期的な影響の知見は、まだ蓄積されていません。麻しん(はしか)のワクチンや、三種混合ワクチンのように100年近くの歴史があるワクチンとは違うので、保護者が慎重になる気持ちはよくわかります。副反応の情報収集や、接種にあたっては小児科医とよく相談することが大事です。


基本に立ち返った対策を
ひなた在宅クリニック山王 院長・田代和馬さん
約400人の在宅患者を診ている「ひなた在宅クリニック山王」(東京都品川区)の田代和馬院長に現状を聞きました。
川田博子記者




昨年夏の感染拡大の第5波では、2回のワクチン接種を終えた高齢者はフレッシュな抗体で守られました。しかし、今回の第6波では、2回目の接種から半年以上間が空き、高齢者は抗体価減少で新型コロナに脆弱(ぜいじゃく)になっている可能性があります。
諸外国では追加接種が進んでいるので、高齢者でも重症化する人の割合が少ないということが分かっています。
一方、日本は3回目の接種が遅れています。追加接種を受けていない高齢者がどの程度コロナに脆弱なのか、データが集まっていません。外国と同じことが日本でもいえるのか、データがないので分からないのです。
当院では、新型コロナ感染と臨床診断できる方の相談が相次いでいます。
最悪のシナリオは、高齢者をオミクロン株が直撃し、重症化した人があふれてしまうことです。老人ホームなどで集団感染が起こると、病院は一気に機能不全に陥ってしまいます。
「オミクロンは症状が軽い」「風邪と一緒」といった楽観的で臆測に墓ついた情報が飛び交っています。
オミクロン株の感染力や変異の速さを見ると、やはり風邪とは違うと思います。重症化する患者の割合が低くても、患者の絶対数が大きく増えれば重症化する人も増えてしまいます。
データが集まり、オミクロン株の病原性や追加接種をしていない高齢者への影譜などが分かるまで、第5波と同様に用心すべきです。ワクチンの追加接種や手指消毒、マスク着用など、感染対策の基本に立ち返った行動をみなさんにしてほしいと思います。

「しんぶん赤旗」日曜版 2022年1月30日付掲載


いまのところオミクロン株は軽症が多いとされている理由は、上気道主体の感染に変化したために気管支炎や肺炎を起こしにくく、二酸化炭素を排出して酸素を取り入れる呼吸の働きを妨げる状態にはなりにくいから。
だからと言って、風邪と同じじゃない。季節性インフルの致死率が0.02~0.03%に対して、新型コロナは1%。
コロナ自体は軽症でも「ロングコビット」と呼ばれる後遺症に苦しむ方も。
ワクチンの追加接種や手指消毒、マスク着用など、感染対策の基本に立ち返った行動が大事。

コロナ禍と観光産業② 持続可能な地域循環型へ

2021-10-19 06:59:38 | 新型コロナウイルス
コロナ禍と観光産業② 持続可能な地域循環型へ
京都・まちづくり市民会議共同代表 中林浩さんに聞く

―今後、持続可能な観光産業はどうあるべきでしょうか。
観光というものをどうとらえるかという根本間題ですね。今、資本主義を分析したマルクスの『資本論』が注目を浴びています。有名な第3巻第48章では、「労働日の短縮こそは秩序ある物質代謝の根本条件である」としています。「物質代謝」とは、生命の体内での化学変化を意味する概念ですが、人間が労働によって自然を変化させること全般をも指します。

地域を健全に
京都大学の建築学教室の西山夘三研究室や三村浩史研究室は、労働から解放された時間(レクリエーション)に着目して都市のあり方を研究してきました。レクリエーションの中でも、とりわけ観光が人間を発達させ地域の秩序をもたらすと考えてきました。労働時間の短縮により自由時間を駆使できる人々が地域を健全にすると考えてきたのです。残念ながら現実では、財界・支配層が観光をも食い物にする事例が多いので、これを批判し、景観や文化財の保全の制度を確立することを主張してきました。
けっして労働時間を短くするわけではない「働き方改革」を進めてきた政府が、もうけ本意で観光政策を展開し、自然環境や文化財を損ねていく、つまり物質代謝をかく乱しているのです。
観光が盛んになるのは、人間の生活が発展する上で当然の帰結です。世界の人々が労働から解放された時間を楽しみに使うために、観光が健全に行われるべきだという観点は欠かせません。
今、京都市で目立っているのは、コロナ後を見据えて超富裕層を対象にしたホテル計画です。二条城周辺や祇園、また鴨川西岸から東山が眺められる景勝地を高級ホテルや高級マンションが次々と占めていこうとしているのです。こうした富裕層のための土地利用は地域に密着したさまざまな観光産業を潤すことにつながりません。近隣の食事会や会合に利用できたり、気軽に立ち寄れるようなロビーや喫茶店もなく、地域住民には近寄りがたいホテルです。
しかも、こうした高級ホテルが小学校跡地を利用して建設されています。小学校は、廃校後も、地域の拠点として重要な役割を果たしてきたにもかかわらずです。



仁和寺門前の高級ホテル建設予定地(中林浩氏提供)

中小を支えて
コロナ後を見据えた観光行政は、明らかに地域循環型社会に反したものです。京都の観光スポットの魅力を長きにわたって維持してきた中小の旅館や土産物屋は、コロナ禍のもとで疲弊しています。こうした中小の観光業者を支えることこそ観光産業を持続可能なものにできるのです。超高級ホテルの乱造は、大手企業のもうけにつながっても、地域経済の振興につながらないといえます。
それでも、日本の各地にはよく続けてきたなと思えるような伝統工芸や伝統芸能が残っていて、見に行く価値があります。また地場産業や地産地消の現場を見るツアーが静かなブームとなっています。このあたりに新しい持続可能な観光が発展する手がかりがあるのでしょう。近年、テレビで、名所にこだわらない町歩き型の紀行番組がすいぶん増えているのもその反映です。
あえて最後にいっておきたいのは、日本における今日のインバウンド(訪日外国人観光客)の急増は、観光客の誘致策が成功しているためではないということです。
日本経済が不振である一方、アジア諸国が経済成長し、経済格差が縮まって、来訪しやすくなったからです。現代社会は各国国内で著しい経済格差を生じさせながらも、国単位でみると先進国と中進国の経済格差は縮まっています。日本経済の不振を観光で取りもどそうとして、経済をも衰退させてしまう、こうした悪循環を絶たなければなりません。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年10月16日付掲載


本来の観光とは、労働時間の短縮(マルクスに言わせれば労働日の短縮)で得られた自由な時間を謳歌して楽しむもの。
一方、もうけ本位で観光を展開すると、自然環境や文化財を損ねていく。
ホテルも、宿泊しない観光客も気軽に立ち寄れるロビーや喫茶店があって欲しい。
京都の観光スポットの魅力を長きにわたって維持してきた中小の旅館や土産物屋は、コロナ禍のもとで疲弊しています。こうした中小の観光業者を支えることこそ観光産業を持続可能なものにできる。


源光庵 悟りの窓と迷いの窓
源光庵 悟りの窓と迷いの窓 posted by (C)きんちゃん
源光庵 悟りの窓と迷いの窓

永観堂 鶴寿台の紅葉3
永観堂 鶴寿台の紅葉3 posted by (C)きんちゃん
永観堂 鶴寿台の紅葉

高山寺 石水院の紅葉_02
高山寺 石水院の紅葉_02 posted by (C)きんちゃん
高山寺 石水院の紅葉

京都には、祇園や嵐山、金閣・銀閣だけでなく、いろんな観光スポットがあります。
その魅力を発信するには、地元力が必要。

コロナ禍と観光産業① 投機的動きの規制こそ

2021-10-18 07:41:55 | 新型コロナウイルス
コロナ禍と観光産業① 投機的動きの規制こそ
新型コロナウイルス禍で苦境の観光産業の現在と今後について、神戸松蔭女子学院大学元教授(都市計画学)で、京都・まちづくり市民会議共同代表の中林浩さんに聞きました。
(国民運動委員会 高瀬康正)

京都・まちづくり市民会議共同代表 中林浩さんに聞く

―岸田文雄新政権は「GoToトラベル」事業を再開しようとしていると報道されています。どう考えますか。
「GoTo」事業は、「コロナ収束後」を前提に安倍晋三前々政権が打ち出したものです。菅義偉前政権は、感染が深刻な事態になるに至ってもやめず、医療ひっ迫を招きました。仮に再開するなら、感染拡大との関係を科学的に検証する必要があります。
また、実施によって観光産業にどのような需要刺激を与え、どのような効果があったのかなどの検証も必要です。それを抜きにした再開は慎重にすべきでしょう。

商業主義進む
もともと観光開発は「観光需要を強力に喚起し、再び観光を成長軌道に乗せる」(2020年版「観光白書」)との商業主義の政策発想で進められてきました。観光をビジネスとしてだけ捉えて、観光客を増やすことを追求する大盤振る舞いが感染を広げたのです。また、観光開発の名のもとに貴重な自然環境や文化財を損ねてきました。
「観光立国推進基本計画」(17年3月閣議決定)は、訪日外国人旅行者数の目標を20年に4000万人、30年に6000万人と設定しました。入り込み客数の目標を軸に観光政策を立てているのです。10年以降は、オーバーツーリズム(観光公害)が地球規模で起こり、日本もそれに巻き込まれました。そこにコロナ危機、パンデミック(世界的大流行)が起こりました。この二つが関連しながら複雑な事態になっています。このことを正確に捉え、検証することが求められています。



仁和寺門前の高級ホテル建設予定地(中林浩氏提供)

トラブル続発
―観光都市である京都市は、オーバーツーリズムの典型といわれていますが…。
京都におけるオーバーツーリズムについては、第1に、16年ごろから「民泊」が急増し、住宅地の中に混入し、路地裏にも入り込みました。管理者が近くにいないヤミ民泊でポヤ騒ぎが起きるなど各種のトラブルが発生しました。
第2に、高層ホテルが林立し、京都駅南側地域や中心部の幹線道路沿いに建設が進みました。観光が下火になれば、ワンルームマンションへの転用をもくろむ低質なものもあります。
第3に、特定の観光スポットの混雑です。祇園・清水寺周辺の三年坂、嵐山の渡月橋周辺ではかつてないほど混雑しました。新型コロナウイルス感染症のまん延は、こうしたことに警鐘を鳴らすものとなりました。
オーバーツーリズムに苦しんでいたスペインのバルセロナ市のように、ホテルと観光客の抜本的な規制を行うべきでした。しかし、京都市は土地・建物利用のコントロールを事実上放棄しました。
政府や京都市は、「観光行政」といってはいるものの、国民や住民、また旅行客の生活を豊かにすることや“充実した旅”を第一に考えているわけではありません。本当に観光を重視するなら、もっと景観や文化財を大切にし、住民生活の中から醸し出される風物を豊かにする施策を推進してきたはずです。
私は、「古都京都の文化財」の一つで、京都市右京一区御室にある仁和寺の門前にホテルを建てることに反対する運動に参加しています。仁和寺は、国宝とされる金堂など多くの文化財があります。その南側に隣接する民有地に東京資本が抵当権を取得し、地上3階建てで、建築基準法の定める2倍の面積をもつ高級ホテルを建設しようとしています。さらに、祇園や二条城周辺では超高級ホテル建設の動きもあります。例えば、二条城の東側に開業した「ホテルザ三井京都」は、最高級スイートルームが、1人1泊130万円だと伝えられています。
こうした動きは、コロナ後を見据えての投機的な活動の一環とみられます。「とくに数を減らすべきは小規模事業者」との見解を持つ菅前首相のブレーンといわれるD・アトキンソン氏の主張が色濃く反映しています。(つづく)(2回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年10月15日付掲載


政府や京都市は、「観光行政」といってはいるものの、国民や住民、また旅行客の生活を豊かにすることや“充実した旅”を第一に考えているわけではない。
本当に観光を重視するなら、もっと景観や文化財を大切にし、住民生活の中から醸し出される風物を豊かにする施策を推進するはず。
すすめてきたのは劣悪な「民泊」で住民に迷惑をかける、一方で高級ホテルの建設。お金さえ落としてくれればいいというもんじゃない。

コロナ禍 中小企業のゆくえ② 下から上へ好循環を

2021-10-09 07:12:33 | 新型コロナウイルス
コロナ禍 中小企業のゆくえ② 下から上へ好循環を
東京商工リサーチ常務取締役・情報本部長 友田信男さん

日本経済には、およそ10年おきに「100年に1度」といわれる不況が起きています。
1990年頃にバブル崩壊、2000年頃に金融危機、10年頃にリーマン・ショック、そして20年にコロナ禍に見舞われました。

後継者難と債務
中小企業は、これらの経済変動に常に巻き込まれながらも何とか生き延びてきました。
だけど、その間、政府も中小企業も一生懸命頑張りすぎた。危機対応に追われて、事業承継が遅れてしまいました。企業はいま経営者の高齢化に直面しています。
経営者に対し、政府はもう一世代早く事業承継支援や代表者の交代を援助したり、教育・指導者育成をやるべきでした。ふと気づいたら、後継者がおらず、休廃業や倒産に追い込まれているという中小企業が多いんです。
コロナ禍で中小企業が抱える過剰債務の問題は深刻です。ですが、対応策はあります。
当初、過剰債務の多くを借入金が占めていました。しかし、これからは税金の支払いが「債務」として入ってくることになります。
政府は税金に関し、これまで1年間支払いを猶予してきました。でも、その猶予期間もすでに終了しています。今年は2年分払わなければなりません。
そこで、納付の猶予あるいは分割も認めてはどうかと思います。弾力的な納税対応を行い、中小企業の資金繰りを支援すべきです。



巣鴨地蔵通り商店街で買い物をする人たち=9月29日、東京都豊島区

「生命維持」こそ
一方、保証協会や金融機関はコロナ禍のど真ん中にもかかわらず平時の審査体制に戻っています。昨年は、融資を認めていたのに、今は事業計画書を提出させて返済能力を判断しています。その結果、保証承諾を拒絶したり、「返済する能力がないですよね」と貸し出さない、あるいは融資を認めても減額するということが起きています。
コロナ禍の真っ最中に平時の審査をされても困ります。
コロナ禍で先が見えない企業には、政府が責任を持って支援をすることが必要です。今なによりも中小企業の「生命維持」が大事だと思います。
その点で消費税の減税は効果的です。消費税を減税して消費を喚起すれば、小売店だけでなく、メーカーそして素材、例えば農林水産業までさかのぼって効果が波及していきます。需要の拡大が目先の商品の売り上げ拡大にとどまらず、それを作っているメーカーさん、その素材を作っている漁民や農民の方、いろんなところに波及していきます。いわゆる「川下産業」から「川上産業」へ波及していくのです。
景気が拡大することによって企業業績も回復します。業績がよくなると賃金が上がる、賃金が上がると消費がまた増えます。安倍政権が始めた経済政策「アベノミクス」は、大企業や富裕層が豊かになればいずれ成長の果実が一般国民にもしたたり落ちるという「トリクルダウン理論」を主張しました。しかし、実際にトリクルダウンは起きませんでした。
消費税減税は、ある意味で「逆のトリクルダウン」になります。
一般国民の消費がどんどん拡大してメーカーまで広がっていき、それがまた下りてきて消費が拡大するという、そういう経済の好循環をつくるべきですし、つくることができると思います。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年10月6日付掲載


経営難だけでなく、後継者難に苦しむ中小企業。
そのなかで、税金の納付の猶予あるいは分割も認めてはどうかと思います。弾力的な納税対応を行い、中小企業の資金繰りを支援すべき。
保証協会や金融機関はコロナ禍のど真ん中にもかかわらず平時の審査体制に。政府が責任を持って支援をすることが必要。
とりわけ、消費税の減税は効果的です。消費税を減税して消費を喚起すれば、小売店だけでなく、メーカーそして素材、例えば農林水産業までさかのぼって効果が波及。

コロナ禍 中小企業のゆくえ① 倒産「抑制」も休廃業増

2021-10-08 07:04:25 | 新型コロナウイルス
コロナ禍 中小企業のゆくえ① 倒産「抑制」も休廃業増
新型コロナウイルス感染拡大で日本経済は深刻な影響を受けています。民間信用調査会社の東京商工リサーチ常務取締役で情報本部長の友田信男氏に中小企業の現状について聞きました。(小村優)

東京商工リサーチ常務取締役・情報本部長 友田信男さん

コロナ禍にあって、倒産件数は数字上記録的に減少しています。
政府の資金繰り支援である無担保・無利息のいわゆる「ゼロゼロ融資」が行われているためです。

増える過剰債務
一見コロナ対策はうまくいっているようにみえます。でも実態はそうではありません。
雇用調整助成金や持続化給付金などの支援による一時的なものでしかないからです。私たちの会社では、倒産は「抑制されている」とみています。
この先も倒産が減少していくかというと決してそうではありません。売り上げが落ち込んで借入金が増えています。その結果、中小企業は過剰債務に陥っています。
倒産は減少していますが、その一方で休業・廃業は右肩上がりに増えています。市場から撤退を迫られている中小企業がむしろコロナ禍で増えているということです。倒産にばかり目を奪われていると中小企業の実態というのはみえてこないと考えています。
企業の多い大都会にいるとさほど目につかないのですが、地方はいま人口減少と高齢化で疲弊が始まっています。地方経済を支える中小企業が衰退すれば、これらの問題に拍車をかけます。雇用が失われ社会保障の負担が増える恐れがあります。コロナ禍が続くと地方の疲弊が加速することになるのです。
廃業の内訳を見ると、コロナが直撃した飲食・宿泊・アパレルなどの業種で廃業を考えているところが多くなっています。おそらく「コロナが終息しても業績回復が見込めない」という判断が背景にあるのでしょう。



新宿駅付近の通りを歩く人々=東京都新宿区

地域雇用真剣に
「中小企業は小さいところが集まっているから生産性が低いんだ。生産性の低い中小企業は単独で生産性を上げるのは無理だから、ある程度集約して生産性を上げていきましょう」という人がいます。
単純にこれだけ聞くと「そうだよね。生産性が上がるから企業の統廃合はいいことだよね」と思われるかもしれません。
この議論は大都市では通用するかもしれません。でも、中小企業の大半が集まっている地方はどうなるのでしょう。生産性を上げるという時にまず大きなテーマになるのが、設備投資と人員削減ですよね。
仮に中小企業を集約するとなると余剰人員がでてきます。「生産性向上」というと聞こえはいいですが、農林水産業が衰退し、新しい産業が育っていない現状では、働き口が無くなってしまうことを意味します。
中小企業の強みは、大企業の大量生産に対して少量であっても多品種がつくれる、あるいは技術的に人の手がはいる強みがあります。生産性だけ求めていくなら日本から伝統工芸品がなくなってしまいます。生産性の効率化というのは一面的には正しいし、僕は全否定するつもりはありません。でも、これをすべてに当てはめるというのは問題だと考えています。地域、業種、規模を見ていかないといけない。日本は北海道から九州、沖縄まであります。東京や大阪の大都市だけの論理をあてはめても無理がきます。地方の雇用の問題というのをもっと真剣に考えていけば、「生産性が低いから集約して」などというような結論が簡単に出てくることはあり得ないのです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年10月5日付掲載


倒産は「抑制されている」…。その一方で休業・廃業は右肩上がりに増えている。
地方は、コロナ禍以前に人口減少と高齢化で疲弊が…。
中小企業の強みは、大企業の大量生産に対して少量であっても多品種がつくれる、あるいは技術的に人の手がはいる強み。
地方の雇用の問題というのをもっと真剣に考えていけば、「生産性が低いから集約して」などというような結論が簡単に出てくることはあり得ない。