きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

中小企業と賃上げ③ 賃金・離職率に「発言効果」

2024-11-12 07:12:49 | 経済・産業・中小企業対策など
中小企業と賃上げ③ 賃金・離職率に「発言効果」

日本大学教授 村上英吾さん

筆者らは、2023年2月に中小企業経営者を対象に調査を実施しました(以下、経営者調査)。インターネット調査会社に登録しているモニターのうち、職業が「会社経営」「会社役員」「自営」のいずれかで、自社企業の正規・非正規従業員数が3人以上300人未満、創業年が19年以前の人を抽出し回答を依頼しました。ネット調査のため、回答者の年齢構成は70歳以上の割合が少なく、50歳未満の割合が多くなっています。

業種で収支に差
21年度の自社の収支状況について5段階で質問したところ、「黒字」は32・9%、「やや黒字」が22・8%でした。「ほぼ収支均衡」は20・5%、「やや赤字」は13・6%、「赤字」は10・2%でした。
国税庁が公表している黒字申告企業数(35・8%)と比べると経営状況の良い企業が多いように思われますが、他の調査(CRD協会のアンケート調査、TKC全国会の会員企業の申告状況)でも黒字企業が半数強を占めます。
収支状況は業種別に大きな差がありました。図1は5段階の回答を「黒字」「収支均衡」「赤字」の3区分にして業種別に示したものです。黒字と回答した企業が多かったのは「金融・保険業」の70・3%を筆頭に、「不動産業・物品賃貸業」66・4%、「電気・ガス・水道業」64・9%、「情報サービス産業」63・9%、「卸売業」58・5%、「建設業」58・5%、「専門サービス業」58・2%と続きます。一方、赤字が多かったのは「宿泊業・飲食サービス業」40・8%、「生活関連サービス・娯楽業」29・9%、「製造業」29・4%、「小売業」29・3%、「運輸業」26・9%でした。収支状況を規模別に見ると、規模が大きくなるほど黒字が多くなり、赤字が減少します(図2)。






経営者調査では地域の同規模の企業と比べた場合の自社の労働条件についても質問しました。正規従業員の労働時間が他社と比べて椙対的に短いと経営者が認識している企業ほど黒字の割合が高い傾向にありました。賃金に関しては、「大幅に高い」「どちらかといえば高い」という企業で黒字企業の割合が高く、「大幅に低い」という企業では赤字企業の割合が高い傾向がありました。

労働環境を改善
経済学における労働組合の役割に関する仮説の一つに「発言効果」があります。労働組合は団体交渉を通じて労働条件の改善に努めますが、単に賃金を引き上げるだけではなく、労働環境を改善させて労働者の不満を減らし、離職率の低下をもたらすことが指摘されています。離職率の低下は、採用や教育訓練のコストを抑制し、労働者全体の技能・能力水準を維持・向上させるため、企業の収益性を高める効果が期待されます。この点について検討した結果を紹介します。
経営者調査は中小企業を対象としており、労働組合がない企業が多数あると考えられたため、従業員が仕事の内容や進め方について意見や要望を述べられるかどうかに関する経営者の認識を従業員の労働環境への発言権と考えました。発言権のある企業では、正規従業員の労働時間が同規模の他社より短く、賃金は高く、離職率は低い傾向がありました。そこで、発言権が収支状況に影響を与えるかどうかについて分析したところ、企業規模や産業ごとの違いを考慮した上で、収支状況を有意に改善することを示唆する結果が得られました。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年11月1日付掲載


収支状況は業種別に大きな差がありました。図1は5段階の回答を「黒字」「収支均衡」「赤字」の3区分にして業種別に示したものです。
経済学における労働組合の役割に関する仮説の一つに「発言効果」。労働組合は団体交渉を通じて労働条件の改善に努めますが、単に賃金を引き上げるだけではなく、労働環境を改善させて労働者の不満を減らし、離職率の低下をもたらすことが指摘。
労働組合のない企業でも、発言権のある企業では、正規従業員の労働時間が同規模の他社より短く、賃金は高く、離職率は低い傾向が。そこで、発言権が収支状況に影響を与えるかどうかについて分析したところ、企業規模や産業ごとの違いを考慮した上で、収支状況を有意に改善することを示唆する結果が得られました。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿