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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

AIと民主主義④ 人類的視点でリスク整理

2024-05-19 07:09:18 | 赤旗記事特集
AIと民主主義④ 人類的視点でリスク整理

経済研究者 友寄英隆さん

国連は、人権を守り発展させる視点から人工知能(AI)をとらえた取り組みを強めています。AI格差(AIの開発や利用の格差)をなくして、AIは人類すべての人権を守り向上させるものでなければならないとうったえています。
国連総会(193カ国) は3月21日、世界のすべての人々にとって持続可能な恩恵をもたらすような「安全、安心で、信頼できるAIシステムの推進」に関する決議を採択しました。AIについては初めての総会決議です。

「オン」でも権利
決議は、すべての加盟国と関係機関に対して「国際人権法を順守した形での運用が不可能な、あるいは人権の享受に過度のリスクをもたらすようなAIシステムの使用を抑制・中止する」ことを求めました。
「人々がオフライン(インターネットにつながっていない状態)で有する権利は、AIシステムによるオンライン(つながっている状態)でも保護されなければならない」ことも確認。国家間での技術開発の水準に格差があることを踏まえ、デジタル技術を適切に活用するためのデジタル・リテラシーを途上国で向上させられるよう支援することを要請しています。
国連は「いま世界にはさまざまなAIについて検討する機関があるが、それらはすべて一握りの大企業や一部の国に集中しており、それがグローバルな不平等を深刻化させ、デジタル格差を亀裂へと変えてしまうおそれがある」(23年10月26日、グテレス事務総長)と懸念しています。
国連は世界各国から選ばれた真に公平で中立的な39人の専門家で構成される「国連AIハイレベル諮問機関」(日本からは2人参加)を設立し、12月21日に最初の検討結果の中間報告書「人類のためのAI統治」を公表しました。中間報告の特徴は、なによりも「人類的視点」に立ち、AIの可能性と危険性の両面を人権の立場から深く検討し、その潜在的リスクを30項目に整理したことです(表)。
中間報告は次のように指摘しています。
「国連憲章、人権宣言、国際法(環境法や国際人道法を含む)へのコミットメント(国際公約)を含む規範は、AIにも適用されるべきである」、「国連は、世界的な経済、社会、健康、安全保障、文化の状況にAIが及ぼす影響を考慮する立場にあり、これらはすべて、人権と法の支配の普遍的な尊重と実施を維持する必要性にもとついている」


AIのリスク(現在および将来)
国連のAI諮問機関の中間報告
(「人類のためのAI統治」2023年12月)
Ⅰ 個人
人間の尊厳・価値・主体性(操作、欺隔〈ぎまん〉、誘導、判決)
生命、安全、セキュリティー(自律型兵器、自動運転車、化学物質との相互作用、生物学的、放射線学的、核防御)
身体的および精神的な完金性、健康と安全(診断、誘導、神経技術)
(その他の)人権/市民的自由、例:公正な裁判(再犯予測)、推定無罪(予測的取り締まり)、表現の自由(誘導)、プライバシー(生体認証)
人生の機会(教育、仕事、経済的安定)
Ⅱ グループ
性別に基づくものを含むサブグループに対する差別/不公平な取扱い
集団の孤立・疎外
コミュニティーの機能
社会的平等・公平性(性別を含む集団の不公平な扱い)
子ども、高齢者、障害者
Ⅲ 社会
国際および国家安全保障(自律型兵器/偽情報)
民主主義(選挙、信任)
情報の完全性(誤った情報または偽情報、ディープフェイク、パーソナライズされたニユース)
法の支配(制度、司法の機能と信頼)
セキュリティー(軍事・警察)
文化の多様性と人間関係の変化(同質化、偽の友達)
社会的一体性(フィルターバブル、ニュース、情報に対する信頼の低下)
Ⅳ エコノミー
権力の集中
技術依存性
経済的機会の不平等
資源の配分・割り当て
AIの過小利用/過剰利用、技術解決主義
Ⅴ (エコ)システム
金融システムの安定
重要インフラへのリスク
環境・気候・自然資源への負担
Ⅵ 価値観と規範
倫理観
道徳的価値観
社会的価値観
文化的価値観
法的規範
(注)番号は、著者が付したもの。筆者仮約


深刻かつ破滅的
昨年11月には、世界28カ国が参加した国際会議「AI安全サミット」が英ブレッチリーで開かれ、従来のAI倫理の枠を超えた、AIによる「深刻かつ破滅的な危害」の防止を視野に入れた「ブレッチリー宣言」を発表しました。同会議の座長を務めたAI研究で名高いカナダ・モントリオール大のヨシュア・ベンジオ教授は「日経」(電子版23年12月26日付)のインタビューで次のように話しています。
「AIをコントロールする人間は大きな力を持つ可能性がある。その力は一義的には経済的な力だろうが、政府と結びつけば政治的・軍事的な支配にもなり得る。AIシステムのコントロールを巡る権力闘争が起こるだろう」(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月17日付掲載


国連総会(193カ国)は3月21日、世界のすべての人々にとって持続可能な恩恵をもたらすような「安全、安心で、信頼できるAIシステムの推進」に関する決議を採択。
「国連憲章、人権宣言、国際法(環境法や国際人道法を含む)へのコミットメント(国際公約)を含む規範は、AIにも適用されるべきである」、「国連は、世界的な経済、社会、健康、安全保障、文化の状況にAIが及ぼす影響を考慮する立場にあり、これらはすべて、人権と法の支配の普遍的な尊重と実施を維持する必要性にもとついている」
「AIをコントロールする人間は大きな力を持つ可能性がある。その力は一義的には経済的な力だろうが、政府と結びつけば政治的・軍事的な支配にもなり得る。AIシステムのコントロールを巡る権力闘争が起こるだろう」

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2 コメント

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マルテンサイト変態千年グローバル (鉄の道サムライリスペクト)
2024-10-16 13:10:54
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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AI革命の旗手リスペクト (文系数学リスキリング)
2024-10-19 07:53:00
「材料物理数学再武装」なつかしいな。番外編の経済学のアダムスミス国富論(神の見えざる手)における、市場原理による価格決定メカニズムの話面白かった。学校卒業して以来ようやく微積分のありがたさに気づくことができたのはこのあたりの情報収集によるものだ。ようはトレードオフ関係にある比例と反比例の曲線を関数接合論で繋げて、微分してゼロなところが上に凸のところの最高峰となり全体最適だとする話だった。

まあ簡単に言うとシナジーということで
 1+1=2  だけではなく
 1+1=3  という世界を
数理的に表現しようとしたもののように受け止められる。
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