中小企業と賃上げ⑤ 価格転嫁阻む値引き要請
日本大学教授 村上英吾さん
私たちが2023年2月に実施した中小企業経営者に対する調査(経営者調査)では、22年以降のコスト上昇分を製品やサービスに価格転嫁できないだけでなく、取引先から値引き要請を受けている企業も少なくないことが明らかになりました。
取引先・顧客から一方的に取引価格や単価の値引きを要請されたことがあるかという質問に、「何度もあった」との答えが30・4%もあり、「定期的にあった」の5・0%と合わせると3分の1が頻繁に値引き要請をされていました。値引き要請をされたことが「ない」は57・2%、「1回だけある」は7・4%でした。
公的機関からも
21年の売上額の半数を企業、消費者、公的機関のいずれかが占めている中小企業について、主要取引先別に「対企業」「対消費者」「対公的機関」として分類し、値引き要請の頻度を集計しました(図)。「何度もあった」と回答したのは「対企業」が32・8%と最多でしたが、「対公的機関」も30・7%ありました。「対消費者」は24・6%でした。
値引き率(平均して価格の何パーセントを値引きするようにいわれたか)は、「1~10%未満」が19・4%、「10~20%未満」が16・8%、「20~30%未満」が4・5%、「30~50%未満」は1・2%、「50%以上」は0・9%でした(値引き要請がなかった企業の値引き率は「0%」です)。
こうした点や、連載3~4回目で見たような業種や規模の違い、労働者の発言権が与える影響を考慮した上で、企業の収支状況に影響を与える要因について分析しました。値引き要請が行われた、あるいは値引き率が高まると収支状況は有意に悪化する一方、コストの増加を価格転嫁できる割合が大きくなれば収支状況は有意に改善することが示唆されました。
収支状況を悪化
値引き要請はコスト増の価格転嫁を困難にして収支状況を悪化させる傾向があります。政府は下請け取引の適正化に取り組んでいますが、公的機関が過度の値引き要請により取引業者の価格転嫁を困難にし、収益性を圧迫していないかどうかも注意が必要です。
そのほかの収支を改善する要因としては、過去3年間に実施した国内設備投資、従業員の教育・能力閥発への投資は有意に収支を改曽させることが示唆されました。コロナ禍の影響もあるかもしれませんが、新製品や新技術の開発、広告宣伝の充実はむしろ有意に収支を悪化させるという結果が出ました。
ただし、これらはあくまで平均的な傾向であって、必要な対策は産業や個々の企業ごとに異なっているでしょう。個別企業の事情に応じて必要な対策にアクセスできるよう支援することが重要です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年11月6日付掲載
取引先・顧客から一方的に取引価格や単価の値引きを要請されたことがあるかという質問に、「何度もあった」との答えが30・4%もあり、「定期的にあった」の5・0%と合わせると3分の1が頻繁に値引き要請をされていました。値引き要請をされたことが「ない」は57・2%、「1回だけある」は7・4%。
「何度もあった」と回答したのは「対企業」が32・8%と最多でしたが、「対公的機関」も30・7%ありました。「対消費者」は24・6%。
値引き要請はコスト増の価格転嫁を困難にして収支状況を悪化させる傾向があります。政府は下請け取引の適正化に取り組んでいますが、公的機関が過度の値引き要請により取引業者の価格転嫁を困難にし、収益性を圧迫していないかどうかも注意が必要。
日本大学教授 村上英吾さん
私たちが2023年2月に実施した中小企業経営者に対する調査(経営者調査)では、22年以降のコスト上昇分を製品やサービスに価格転嫁できないだけでなく、取引先から値引き要請を受けている企業も少なくないことが明らかになりました。
取引先・顧客から一方的に取引価格や単価の値引きを要請されたことがあるかという質問に、「何度もあった」との答えが30・4%もあり、「定期的にあった」の5・0%と合わせると3分の1が頻繁に値引き要請をされていました。値引き要請をされたことが「ない」は57・2%、「1回だけある」は7・4%でした。
公的機関からも
21年の売上額の半数を企業、消費者、公的機関のいずれかが占めている中小企業について、主要取引先別に「対企業」「対消費者」「対公的機関」として分類し、値引き要請の頻度を集計しました(図)。「何度もあった」と回答したのは「対企業」が32・8%と最多でしたが、「対公的機関」も30・7%ありました。「対消費者」は24・6%でした。
値引き率(平均して価格の何パーセントを値引きするようにいわれたか)は、「1~10%未満」が19・4%、「10~20%未満」が16・8%、「20~30%未満」が4・5%、「30~50%未満」は1・2%、「50%以上」は0・9%でした(値引き要請がなかった企業の値引き率は「0%」です)。
こうした点や、連載3~4回目で見たような業種や規模の違い、労働者の発言権が与える影響を考慮した上で、企業の収支状況に影響を与える要因について分析しました。値引き要請が行われた、あるいは値引き率が高まると収支状況は有意に悪化する一方、コストの増加を価格転嫁できる割合が大きくなれば収支状況は有意に改善することが示唆されました。
収支状況を悪化
値引き要請はコスト増の価格転嫁を困難にして収支状況を悪化させる傾向があります。政府は下請け取引の適正化に取り組んでいますが、公的機関が過度の値引き要請により取引業者の価格転嫁を困難にし、収益性を圧迫していないかどうかも注意が必要です。
そのほかの収支を改善する要因としては、過去3年間に実施した国内設備投資、従業員の教育・能力閥発への投資は有意に収支を改曽させることが示唆されました。コロナ禍の影響もあるかもしれませんが、新製品や新技術の開発、広告宣伝の充実はむしろ有意に収支を悪化させるという結果が出ました。
ただし、これらはあくまで平均的な傾向であって、必要な対策は産業や個々の企業ごとに異なっているでしょう。個別企業の事情に応じて必要な対策にアクセスできるよう支援することが重要です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年11月6日付掲載
取引先・顧客から一方的に取引価格や単価の値引きを要請されたことがあるかという質問に、「何度もあった」との答えが30・4%もあり、「定期的にあった」の5・0%と合わせると3分の1が頻繁に値引き要請をされていました。値引き要請をされたことが「ない」は57・2%、「1回だけある」は7・4%。
「何度もあった」と回答したのは「対企業」が32・8%と最多でしたが、「対公的機関」も30・7%ありました。「対消費者」は24・6%。
値引き要請はコスト増の価格転嫁を困難にして収支状況を悪化させる傾向があります。政府は下請け取引の適正化に取り組んでいますが、公的機関が過度の値引き要請により取引業者の価格転嫁を困難にし、収益性を圧迫していないかどうかも注意が必要。
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