2021年02月26日
北海道新聞(長谷川裕紀 米田真梨子)
[サンマ漁獲枠4割減合意 中台含め年33万トンに]
サンマの資源管理を議論する北太平洋漁業委員会(NPFC)は25日、2021、22年の総漁獲枠を20年比4割減の33万3750トンにすることで合意し、閉幕した。中国や台湾などの漁獲が多い公海に19万8千トン、日本とロシアの排他的経済水域(EEZ)に13万5750トンを配分する。サンマの不漁が深刻化する中、日本が提案した漁獲規制の強化を中国や台湾などが受け入れ、資源保護の動きは一定程度進んだ。
ただ、各国・地域が獲ったサンマは18年に43万9千トン、19年に19万1千トン。今回設定した33万3750トンの枠は豊漁の年には漁獲量に歯止めをかけることができるが、19年のような不漁が続けば効果は乏しい。
政府代表を務めた農林水産省の太田慎吾大臣官房付は会合後、記者団に「漁獲枠を4割削減できたのは一歩前進だが、これでサンマの持続的な利用が可能になるとは言い切れず、引き続きしっかりした管理措置をつくっていきたい」と述べた。次回の会合でさらに漁獲枠を削減したい考えだ。
今回の会合は23日からテレビ会議で開かれ、日本や中国、台湾など8カ国・地域の代表が参加した。年間20万~30万トンあった漁獲量が15年以降は10万トン台以下に低迷する日本は、資源管理の重要性を主張。19年の前回会合で設定した総漁獲枠(公海33万トン、日本とロシアのEEZで22万6250トン)の削減を提案した。
これに対し、漁獲規制に消極的だった中国や台湾も19年の漁獲量が前年から4割超落ち込み、資源減少への危機感を募らせていたことから、公海、EEZいずれも漁獲枠4割の削減に同意したとみられる。
サンマは沖合の公海で育ち、夏から秋にかけて北海道や東北の沿岸に近づく。公海で中国や台湾などの漁獲を抑えることで、日本近海の資源が回復に向かうことを日本は期待している。
(関連配信済情報)
2021年02月04日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[北太平洋漁業委員会NPFC サンマ資源を論議]
北太平洋漁業委員会NPFCが、2021年1月20日から同22日までの間、科学委員会専門会議を開催し、全ロシア海洋漁業研究所ヴニロ太平洋支部チンロの代表者がこれに出席した。
当該会議は通信を利用して開催され、ロシアのほか、カナダ、中国、日本、韓国、米国、バヌアツ、台湾の科学研究機関の代表者らも参加して、2020年のサンマ漁業のレヴュー等が行われた。
2020年、北太平洋では、ロシア、日本、台湾、韓国、中国、そしてバヌアツの漁船が、サンマ操業を行ったが、新型コロナウイルス拡散防止対策により、検疫等、複雑な条件が加わった。
近年、サンマ資源の減少傾向が確認されており、特に2020年、各国の着業隻数もおしなべて減少した結果、各漁場では過去最低の漁獲量を示し、総漁獲量は前年2019年比71%相当の約13万7,000トンにとどまった。
当該会議では、一貫したデータ収集方法で、合意されたベイズ型状態空間プロダクションモデル(Bayesian state-space surplus production model:BSSPM)を用いて、サンマの資源評価の結果をレヴューした。
サンマの資源評価の総括としては、2017年のバイオマスが1980年以来の最低レヴェルまでに低下、2017年から2019年、歴史的低水準にとどまり、漁獲量Fが持続生産量を最大化するFmsyを上回っていたことが示された。
この資源評価の問題を議論の結果、サンマ資源に影響を与える生態学的要因の研究を強化することに合意、次回会合において、バイオマスと低漁獲量のモデル推定値を踏まえ、資源の持続可能性を確保するための対策を検討することとなった。