2021年02月05日
リポート:北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[シェスタコフ ”2030年までの漁業発展戦略”実行状況を報告]
ロシア漁業は、現在、”2030年までの漁業発展戦略 経済成長と国家食料安全保障”に基づき行動している。
ロシア漁業庁長官シェスタコフは、副首相アブラムチェンコが委員長を務める漁業分野発展のための政府委員会において当該発展戦略の実行状況を報告した。
当該発展戦略は、2017年9月15日、サンクトペテルブルグで開催された第1回ロシア国際漁業フォーラム(МЕЖДУНАРОДНЫЙ РЫБОПРОМЫШЛЕННЫЙ ФОРУМ)において発表された。
発展戦略では、要となる4つのプラットフォームを設定しており、経済的発展の第1番目として”新たな白身魚産業”A)スケトウダラ・マダラ・ハドック漁船団の最大70%の更新、B)極東地方、北西地方などにおける白身魚フィレとそれを利用した製品を生産するためのハイテク水産加工場建設、を挙げている。
総合プロジェクト”新たな白身魚産業”では、”投資クオータ”のメカニズムにより、2025年までに43隻の漁船が建造され、26の水産加工場が建設される予定となっている。
現在まで、新規のプロジェクトがともなう”投資クオータ”は77件が合意、契約締結済で、投資額は約1,920億ルーブルに達している。
この内、53件が漁船建造、24件が水産加工場建設で、これに210億ルーブルが振り向けられている。
漁船団は既に5隻が操業を開始、26隻が建造中で、残る22隻も2023年末までにプロジェクトが実行される計画となっている。
また、極東地方で9つ、北部地方で10の水産加工場が建設された。
発展戦略実行を目的とする行動計画には、大型船3隻、中型船7隻の科学調査船更新のための建造が規定されている。
割り当てられた予算に基づき、2023年に2隻の中型科学調査船の建造がネフスキー造船所で開始されることとなっている。
このほか、2020年の商業増養殖生産量が32万8,600トンで、2019年比プラス15%、2016年比でプラス60%と成長していること、また、20のサケマス孵化場を新たに建設する計画であること等が報告された。
ロシアの2030年までの漁業発展戦略”経済成長と国家食料安全保障”
2017年09月 仮訳 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
1.主な事項と要となる指標
(1)累積的なGDP貢献の増加
①GDP貢献の年間平均成長 5%(2017年-2030年)
②水棲生物資源漁獲のトンあたりの漁業会社の粗利益の成長 150%(2030年 養殖漁業を除く)
(2)確実な国家食料安全保障
①水産物の一人当たりの消費量 22-27kg(2020年-)
②水産物の食料自給率 80-90%(2017年-)
(3)国際市場におけるリーダーシップの再強化
①ヨーロッパ製品市場におけるスケトウダラとハドックのシェア 25%(2030年)
②アジア太平洋諸国製品市場におけるスケトウダラとサケマスのシェア 10%(2030年 主に中国国内消費)
(4)人材資本開発
①雇用創出 2万5,000(2030年)
②労働生産性の向上 150%(2030年)
(5)環境負荷の低減
持続的な漁業と養殖にかかるロシア水産業のリーダーシップの国際的認知(2025年 FAO基準)
2.漁業発展戦略の要となる4つのプラットフォーム
(1)経済的発展
①新たな白身魚産業
A)スケトウダラ・マダラ・ハドック漁船団の最大70%の更新
B)極東地方、北西地方などにおける白身魚フィレとそれを利用した製品を生産するためのハイテク水産加工場建設
C)新たな施設による廃棄物処理
②海洋バイオテクノロジー
A)北西太平洋のイワシ資源の成長を利用した高次加工・機能性食品(オメガ3)の生産など
③表層魚製品
A)北西太平洋のイワシ・サバ資源の成長を利用した水産加工と資源の保全
B)ICCAT海域におけるマグロ漁業と資源の保全
④サケマス養殖
A)北西地方、中央地方などにおけるサケマス養殖漁業の成長
B)極東地方におけるサケマス稚魚生産の成長
⑤その他経済成長のためのサポートプログラムの設定など
(2)社会的発展 水産業と関連管理組織の社会的責任の領域
(3)環境的発展 漁業・養殖・法令順守監視システムの新たな規範
(4)戦略設定の発展 戦略実行の管理手順