2021年02月27日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[カニ王アレッグ・カンの盟友サハリン州議員パショフがハバロフスクで勾留される]
”極東のカニ王”と呼ばれたアレッグ・カンが創業した”モネロン”(Монерон)社現代表で、サハリン州議会議員、盟友となるドミトリー・パショフ(Дмитрий Пашов)が出張中のハバロフスクで勾留された。
すでに起訴期間が満了している古い事件の尋問のため、この措置がとられた。
パショフは、国際指名手配にリストされているカンとの関係性から尋問を受けている。
カンには、カニを輸出する際、製品価値を過小評価し脱税した疑いがかけられている。
また、カンには、2010年にウラヂオストクで殺害された同業他者ワレリイ・プヒデンコ事件への関与の疑いがかけられている。
カンは捜査当局の動向から2018年末、海外に逃亡したが、それ以前に、信頼できるパショフに資産を移していた。
これにより、パショフはサハリン州で最も裕福な議員となった。
カンは、1967年ネヴェリスク生まれで、同地の合弁企業ワッカナイを振出に、カニ漁業にかかわり、極東の“カニ王”と呼ばれるまでになったが、当該合弁企業当時からパショフも経営に参加していた。
カンは、現在も海外に逃亡中とされているが、2020年5月下旬、メディアのインタァヴューにこたえている。
刑事事件となっている自身へのロシア調査委員会の捜査、訴えは公正なものではないと主張、一連の出来事が、オリガルヒ(新興財閥)ゲナジー・チムチェンコの義理の息子グレブ・フランクとの対立の後に始まったと言及した。
スケトウダラを年間30万トン以上生産するロシア漁業最大手“”ルスカヤ・ルイボァプロムシェレンナヤ・カンパニヤ”(「ロシア漁業会社」)は、2019年、系列企業”ルスキー・クラブ”(「ロシアのカニ」)が出資する子会社を通じてカニ漁獲割当オークションに参加、極東海域の上場落札ロットの約4割を獲得し、大規模進出を果たした。
「ロシア漁業会社」は2011年、”ルスコエモーレ・ダブイチャ”(「ロシアの海:生産」後に社名変更)として、石油トレーダーで大統領プーチンの盟友ゲナジー・チムチェンコ、現国防大臣ショイグが非常事態大臣を務めていた時代の同第1副大臣だったユーリ・ヴォロビヨフの息子マキシム・ヴォロビヨフ、そして1998年から2004年まで運輸大臣だったセルゲイ・フランクの息子グレブ・フランク(ゲナジー・チムチェンコの義理の息子でもある)により設立された。
2018年2月には、主要株主だったマキシム・ヴォロビヨフが、それをグレブ・フランクに譲渡、現在、支配的主要株主はグレブ・フランクとなっている。
カンは、背景のすべてがカニの漁獲割当配分に関する闘争だと言及した。
なお、ロシア検察当局は、革新的な中国へのカニ輸送事業で、ロシアと中国の間の貿易関係を強化する重要な仲介者となり、海洋ビジネスの発展への貢献を評価され、”ロイヤル・ピープル・アワード”を受賞したイヴゲニー・ペカリィを2021年2月、起訴した。
当局はペカリィがカンの外国への違法貿易に協力し、刑法第33条5項と第226条1項に関する違法行為(戦略的で重要な資源の密輸)をしたとしている。
ペカリィは、2017年、カンの指示により、3,870万ルーブル相当、50トン以上のカニを中国に密輸した。
ペカリィは、中国企業との架空の商業取引契約を作成、それに署名し、サハリン税関に対して付加価値税に関する不正確な情報を提出して、カニを密輸することに協力し利益を得たとされている。