2022年06月12日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[ポスト英国EU離脱 アイルランド EU漁業共通漁業政策の不均衡悪化を抗議]
アイルランド業界は英国がEUを離脱したことにより、共通漁業政策による漁獲割当配分の不均衡が悪化したとして、この是正を求め関係機関へのロビー活動を強化している。
アイルランド漁業生産者機構“IFPO”によると、EUの共通漁業政策により、アイルランド海域でのEU漁業国の年間漁獲量は、約2億5,000万ユーロ(356億円)相当で、自国アイルランドのほぼ2倍となっている。
“IFPO”は、英国がEUを離脱し、独自の漁獲割当を確保したことで、ロックオール島周辺海域漁場を失い、漁獲割当の不均衡がより悪化したことを指摘している。
アイルランド漁船への漁獲割当は、自国海域の許容漁獲量のわずか18%である一方、一部のEU加盟国の年間漁獲割当が不明な中、未利用となっている許容漁獲量が存在していると推察されており、これをアイルランド漁船に再配分することを“IFPO”は求めている。
EU加盟国は、英国のEU離脱により、これまでの英国海域での漁獲量の25%(金額ベース)を譲渡することになった。
これらの英国への漁獲割当の譲渡は、2021年から開始されており、2026年半ばまで実行される。
譲渡は、2021年に60%、2022年に70%、2023年に80%、2024年に92%と段階的で、2025年の終わりにこのプロセスを100%完了することになる。
非TAC魚種については、2012年から2016年の間に記録された平均漁獲量をベースに、2026年半ばまでに制限されることになっている。
分析によると、アイルランドは2026年までに漁獲割当の約15%を失うことになるが、これはフランス漁業が失うと予想されるレベルの約2倍となっている。
このことからアイルランドは英国とEUの貿易協力協定がアイルランド漁業に不当な負担をかけていると抗議を続けている。
アイルランドは、英国のEU離脱の結果による漁業者への補償を求めざるを得なくなり、昨年2021年、EUが同国へ860万ポンド(約13億1,000万円)の救済支援を行った経緯がある。