2022年06月19日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[ポスト英国EU離脱 EU 英国による通商協定の一部破棄発表に対し法的措置を示唆]
EUの主要機関の中で唯一、新規法案を策定する権限を持つ欧州委員会は、2022年6月15日、英国が2019年にEUと交わしたEU離脱後の通商協定の一部を破棄する計画を発表したことを受け、法的措置を講じることを示唆した。
英国が発表したのは北アイルランドとEU加盟国となるアイルランドの間の通商を定めた”北アイルランド議定書”を変更するもので、本質的な国益を守るため、他に選択肢はないと説明している。
英国は2021年1月にEUを離脱し、北アイルランドとアイルランド間の通商に関し、2019年に英国とEUで交わされた”北アイルランド議定書”が発効した。
この最大の特徴は、北アイルランドに限り、関税手続きなどをEU基準に合わせた特別な運用をすることにある。
英国本土から北アイルランドに物品を送る際は、品目によって企業が輸入関税を支払うことが必要となっている。
関税手続き上の境界線は、北アイルランドとアイルランドではなく、同じ英国内の英国本土と北アイルランドの海上に引かれ、英国本土からの物品が北アイルランドにとどまれば、英国当局は企業に税を還付する。
また、EU加盟国のアイルランドまで持ち込まれた場合は還付されない仕組みとなる。
北アイルランドへ物品を輸入している企業は、追加コストや手続きの煩雑さといった問題に直面していて、特に水産物を含む食品等の分野で厳しい対応を余儀なくされている。
他方、北アイルランドからアイルランドへの輸出では、EU市場への摩擦のないアクセスが維持されているため、輸出業者は恩恵を受けている。
これらのことから、北アイルランド漁船と同一の海域で操業を行っているスコットランド業界は、以前、EUに輸出する水産物が関税の対象となる不平等感を表明した上で、スコットランド漁船が北アイルランドに船籍登録し、漁獲物を陸揚げさせ、加工せずにアイルランドに輸送する抜け穴があり、これにより、漁獲物がEU関税から免除されることが可能となる問題が存在することを指摘していた。