2022年06月17日
北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア漁業庁長官シェスタコフ 世界の海と変革:ロシアと海外はどのような船団を求めているのか]
ロシア漁業庁長官シェスタコフは、2022年6月15日から開催された第25回サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムで“世界の海と変革:ロシアと海外はどのような船団を求めているのか”と題し、基調報告を行った。
シェスタコフは、国内市場に高品質な水産物製品を提供するための船団と、科学調査船の更新の必要性を説明した。
2016年、ロシア大統領プーチンは、国内造船所で漁船建造する漁業者と陸上加工場建設を行う水産会社に優先的に漁獲割当を配分する“投資クオータ”に関する法令に署名を行った。
ソ連崩壊後、漁業者は、中古外国漁船を購入することによって船団を更新した。
プーチンが“投資クオータ”の導入を決定するまでに、平均船齢は35年に達し、損耗は90%を超え、船団の運営を維持するためのコストは増大していた。
漁業者は、操業の効率を改善するために、生産施設となる船団と漁獲物処理をアップグレードすることに投資を開始した。
ロシアでは、初めて、漁船団の建造が開始され、今日、近代的でハイテクなスーパートロール漁船では、洋上でミールが生産され、廃棄物ゼロの処理が行われている。
また、沿岸漁業向けの鮮魚流通のための様々なタイプの漁船も建造されている。
“投資クオータ”の第1弾では、投資額2,047億ルーブルにより64隻が建造されることになる。
これにより、漁船団は北部海域で80%、極東海域で40%が更新されることになる。
極東海域はロシアの漁業生産の70%を占めており、当該海域での投資プロジェクトを継続する必要がある。
また、別な枠組みで、カニ漁獲割当配分にオークションを導入し、落札者に漁船建造を義務付けするプロジェクトが設定された。
このプロジェクトの投資額は610億ルーブルで41隻のカニ漁船が建造されることになる。
“投資クオータ”とカニ漁獲割当オークションのプロジェクトにより、2025年までに105隻が建造されることになっており、現在、6隻の漁船と、3隻のカニ専業漁船が漁業者に引き渡されている。
シェスタコフは、パンデミックと新しい制裁のために、建造計画が大幅に遅れていて、現在の状況で最も重要なことは、舶用部品等の輸入代替であることを指摘し、すべての問題を解決するために、ロシア漁業庁が産業貿易省や造船業界と連携を強化していると語り、一部のプロジェクトは再設計する必要があることから、政府が実施期限を延長することを決定したと加えた。
また、一方でシェスタコフは、新たな水産分野での投資の必要性を指摘した。
シェスタコフは市場への高品質な水産物製品供給のための冷凍・冷蔵運搬船の更新、建造を対象とするプロジェクトのための投資漁獲割当第2弾の設定を提案し、加えてロシア漁業の資源基盤の拡充を目的に科学調査船団の更新が必要であることを訴えて基調報告を結んだ。