2023年01月28日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア漁業スケトウダラ高次加工化戦略 歴史上初めてフィレ生産で米国を抜く]
昨年2022年、高次加工化戦略をとっているロシア漁業は、前年2021年比16.8%増の13万9,000トンのスケトウダラ冷凍フィレを生産し、歴史上初めて米国の当該製品生産量を上回った。
昨年2022年の米国漁業のスケトウダラ冷凍フィレ生産量は、前年2021年比1.5%減の13万8,000トンにとどまった。
ロシアのスケトウダラ冷凍フィレの生産量は2015年の4万トンから3.5倍に増加し、米国は17万6,000トンから21.6% 減少したことになる。
近年、世界のスケトウダラの生産量は350万トンで、ロシアが180万トン、米国が150万トンを占めてきたが、昨年2022年、後者のTAC設定が120万トンまで削減され、これも米国の冷凍フィレの減産につながっている。
ロシアはスケトウダラ漁業の高次加工化戦略をとって漁船団の近代化と再装備をおこなっており、2020年に洋上フィレを生産できる漁船は30隻だったが、昨年2021年までにその隻数は40%増の42隻になり、沿岸陸上加工場の建設も進み、当該製品の生産が拡大している。
一方、昨年2022年の米国は、漁獲量の削減に加え、漁獲物が小型化し、フィレの生産に向かない魚体が多かったとされている。
ロシアがスケトウダラ冷凍フィレを増産させた理由として外的要因も指摘されている。
ロシアのスケトウダラ漁業は、洋上でH&G(ドレス)を生産し中国へ輸出、中国により陸上でフィレ加工してEUへ再輸出される仕向けが主流で成立してきたが、新型コロナウイルス拡散防止対策による中国の冷凍水産物輸入制限により、当該貿易は鈍化、2021年初めから、新しい市場を探すことを余儀なくされ、中国加工を介さない高次加工製品の生産が必要となり、フィレ、ミンス、そしてすり身の生産増加の要因となったとされている。
この結果、昨年2022年、速報ベースで前年2021年比の4倍となる2万8,000トンのスケトウダラの冷凍すり身も生産されている。