2023年06月16日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[#37 洋上風力発電と漁業 海外の経験 オランダ 洋上風力で北海漁業縮小 陸上産業への影響大規模]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
洋上風力発電所の建設、燃料価格の高騰、そして英国EU離脱などの課題の積み重ねによるオランダ北海漁業の縮小が、陸上産業に大きな影響を与えているとオランダ農業・自然・食品品質省に委託を受けた“ワーヘニンゲン経済研究所”(Wageningen Economic Research)が報告した。
同研究所は北海での漁業が与える陸上産業の雇用などの社会経済的規模は、北海での漁業そのものの規模よりもはるかに大きくなるとしている。
2021年、オランダには北海での漁業に依存する陸上企業が236社あった。
これらは、水産物市場、水産物加工業、水産物卸、物流、造船、舶用機器メーカ等で活動しており、オランダのこのセクターの総売上高は 66億ユーロで、従業員数は 13,550人となっている。
また、2021年、346社の内314社の売上高の5%以上を北海での漁業に依存していることが分かった。
依存度は企業によって大きく異なるが、平均すると、これらの企業では売上高の40%-50%が北海での漁業に直接起因していた。
したがって、2021年の北海での漁業に起因する関連業界の売上高は29億ユーロと算定された。
これに対し、2021年の北海での操業による陸揚げ金額そのものは、3億4,400万ユーロ、乗組員数が約1,800人で、金額だけとっても、陸上産業への波及が8.4倍となっていることが分かった。
北海での漁業の縮小は、輸入水産物の取扱いが低い業界を圧迫し、関連陸上産業は衰退することになる。
失われるのは雇用だけではなく、企業は最大の懸念がユーロや雇用統計では表現できないと指摘する。
スタッフを失い、その結果、代替の難しい専門知識が失われる。
北海の水産物のフィレ加工や取引、技術設備の構築、舶用機器のメンテナンスなどの専門知識の喪失による国際競争力の低下と輸入水産物への依存の高まりが懸念されている。
オランダ政府とEUの政策決定は、長期的な事業計画の作成とイノベーションへの投資の見通しを提供する必要があり、他のEU加盟国との協力と調整が、同国水産業の回復にとって極めて重要な課題となっている。