2023年06月09日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[“復活の日” ロシア漁業 2023年末にも既存漁船で南極オキアミ操業開始の可能性]
ロシア漁業庁長官シェスタコフは、今年2023年末にもロシア漁業の1社が既存漁船(中古専業漁船買収)で南極オキアミ操業を開始する可能性があると発表した。
ロシア漁業はCCAMLR(南極海洋生物資源の保存に関する委員会)海域に2隻の投入を計画しており、1隻は着工済となっているが、舶用機器の調達問題等から建造プロジェクトが遅れ気味で、2025年からの操業開始の見込みとなっていた。
ロシア政府は、2021年6月30日付No.1767により、2030年までの同国漁業発展戦略に基づく、南極漁業に関する計画を承認し、南極オキアミ漁業への復活を目標に掲げ、世界の大洋でのプレゼンスの向上と、当該資源の加工による新たなハイテク産業の創出に向かって行動している。
オキアミ漁業は年間7ケ月-9ケ月間操業で、母港との往来頻度は少なく、最大限に漁業時間を利用できることから、船団組織は経済面からも実現可能と評価されている。
オキアミは地球上で最大量の水棲生物資源であり、その漁獲可能量は数百万トンレヴェルと推定されている。
オキアミについては、優れた栄養特性が確認されており、缶詰製品から養殖の餌等、幅広い産業用途があり、特に高品質なオイルについては、世界の経験が示すように健康食品業界でも需要がある。
先に全ロシア海洋漁業研究所ヴニロは、オキアミ漁業支援のためデータベースも作成している。
これには、南極とインド洋の接続海域での調査中に得られたオキアミ研究に関する多数のデジタル化された情報のほか、2021年12月から翌2022年3月までの間に行われた、科学調査船“アカデミク・ムスティスラフ・ケルディッシュ” (Академик Мстислав Келдыш)による大西洋側海域での調査航海のデータも含まれている。
当該調査航海では、大西洋域のブランズフィールド海峡と南極海峡、そしてウェッデル海をカヴァー、当該資源のサイズと年齢構成、資源分布等の情報を収集している。
データベースは、南極オキアミの資源研究を実施するための基礎であり、当該資源の開発のための戦略的計画に貢献するものとなる。
現在、当該資源を最も利用しているのはノルウエーで、中国も近代的漁船を投入し努力量を上げている。
最近の調査研究結果では、南極オキアミのバイオマスは1億2,500万トンと算定されている。
両国による年間漁獲量は60万トンだが、これを200万トンまで拡大する計画とも伝えられている。
一方、ロシアは当該漁業に適した漁船を失ってしまったことから、ここで操業を行っていない。
1980年代、ロシア中央設計局”ヴォストーク“がオキアミ漁船プロジェクトNo.16080”アンタルクチダ(Антарктида)を開発、同年代半ばから1990年代初頭における南極域でのオキアミの年間漁獲量は36万トンに達していた。
*科学調査船“アカデミク・ムスティスラフ・ケルディッシュ” (Академик Мстислав Келдыш)
ロシア科学アカデミー所属 母港カリーニングラード
IMO No.7811018 コールサインUFJI
建造 プロジェクトNo.4600 1981年3月15日 フィンランド 6,345トン 122.2メートル
ソ連科学アカデミーの科学者ムスティスラフ・ケルディッシュにちなんで名付けられた。
ジェームズ・キャメロンの映画「タイタニック」のドキュメンタリー撮影に使用された。
1989年4月7日に船内で火災が発生した後、ノルウエーの南東海岸で沈没したソビエト攻撃型原子力潜水艦K-278“コムソモレツ”( Комсомолец)の捜索にも参加した。