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2016年10月22日
北海道新聞【函館】
[択捉島の漁業権免許証が行方不明 26年前、函館図書館から]
北方領土の 択捉島 で、終戦前に操業していた漁業会社の定置網 漁業権 の免許証が26年前、保管先の市立函館図書館(現函館市中央図書館)から持ち出されたまま行方不明になっている。市教委は今春、持ち出した人物が死去し、別の人の手に渡ったとの情報を得たが、特定などはできていない。領土交渉の進展が期待される12月の日ロ首脳会談を前に、関係者は「補償要求のための大切な資料なのに」と気をもんでいる。
行方が分からないのは、択捉島近海でサケ・マス漁を行っていた「択捉漁業」(函館)の定置網1094カ統の免許証1094枚のうち1091枚。
複数の関係者によると、免許証は1910年(明治43年)に旧漁業法に基づき、北海道庁長官が漁業経営者らに交付。42年(昭和17年)、政府の指導で漁業経営者らの経営統合で発足した択捉漁業に移された。45年8月の旧ソ連の北方領土侵攻後、操業不能となり、函館の本社で保管していた免許証は戦後の混乱の中で散逸した。
択捉漁業は49年に解散したが、択捉島にある土地などの財産の処分ができず、清算できない状態にある。こうした中、父親から択捉漁業の株を引き継ぎ、71年から数年間、同社清算人を務めた駒井惇助(じゅんすけ)さん(83)=函館市=が69年、函館の古紙回収業者の手にあった免許証1094枚を発見した。補償要請活動などで使おうと、3枚だけを手元に置き、残り1091枚を火事などから守るため、函館図書館に預けた。
ところが90年、当時の択捉漁業の清算人だった横浜市の男性が図書館から借り出した。その後、返還請求に応じていない。函館市教委は2006年以降、返還請求をしていなかったが、今年4月、駒井さんが免許証の所在を尋ねたため、あらためて対応。5月に男性に手紙で問い合わせたところ、6月に妻から「夫は亡くなった。静岡市の男性が『新しい清算人になった』と言って免許証を持っていった」との電話連絡があったという。
択捉漁業の法人登記によれば、静岡市の男性は07年に代表清算人に就き、今年5月に辞任。現在は静岡県浜松市と東京都練馬区の2人が清算人と記載されている。
函館市教委は静岡市の男性に手紙を出して連絡を求めたが、返事はないという。新たな清算人2人とは「まだ連絡はとっておらず、調査中」としている。
練馬区の人物が理事長を務める東京の NPO法人 は、北海道新聞の取材に「理事長は海外に出張中。本人でなければ回答できない」としている。
駒井さんは「国に補償を求める上でも大切な資料。市には本腰を入れて返還請求をしてもらい、早く図書館に戻してほしい」と話している。(函館報道部 高橋澄恵)
■「権利消滅」 GHQ 覚書根拠
1901年(明治34年)に制定された旧漁業法は、戦後の50年に全面改正され、これに基づいて新たに漁業権が交付された。この際、旧漁業権者は権利内容に応じて国から補償を受けたが、北方領土の旧漁業権者は対象から外され、現在まで補償は行われていない。
外務省によると、その根拠は46年1月の連合国軍総司令部(GHQ)の覚書。日本の政治、行政権の行使を停止する地域として「千島列島、歯舞群島、色丹島」とあり、政府はこの時点で北方領土の旧漁業権は「消滅していた」として、漁業法改正に伴う補償の対象外とした。
これに対し、旧漁業権者らは50年から補償要請活動を始め、72年には「北方地域漁業権補償推進委員会」を設立。補償要求額を約298億円と算出し、「北方領土はわが国固有の領土だとする政府方針と矛盾する」として補償実現のため陳情活動を続けている。
北海道弁護士会連合会も88年、「北方領土の不動産所有権、鉱業権は存続しており、旧漁業権が消滅したとする政府見解は誤り。国は補償措置を講ずるべきだ」とする首相宛ての要望書を提出している。
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