日本でしか発売されていない日本語の本を入手するためにはネット販売ショップに注文することになるが、私の場合、ほとんど Amazon.co.jp の一択である。他も試してみたのだが、入手までに時間がかかったり、梱包がひどく杜撰だったりして、一回きりで止めたところが多い。アマゾンも配送センターによって著しく梱包方法に差があって、一時期名古屋の配送センターから届く書籍はひどい状態だったことがある。さして厚みのない封筒の中に本がそのまま突っ込んであるだけで、輸送中に中で本同士がぶつかり、角が折れていたり、ページが破れかかっていたことさえある。以前はむしろ過剰ともいえるほどに厳重な包装だったのに、そういうことが三回ほど続き、よっぽどクレームをつけようかと思ったが、海外からだと返送も面倒だし、新たな配達にも時間がかかるから、結局泣き寝入りしてしまった。その後、包装方法は改善され、以前ほど厳重ではないが、輸送中に本が傷まない程度には保護されるようになった。最終的な責任の所在はアマゾンにあるのだろうが、包装と配送を請け負っているのはDHLだからそちらに問題があったのかもしれない。ただ、改善されたとはいえ、一抹の不安は残り、最近はほとんど注文しなくなってしまった。同じ本の電子書籍版があればそちらで我慢することが多い。
現在日仏英合わせて2500冊ほど電子書籍を所有しており、職業上あるいは研究のための実用性という点からはずいぶん重宝している。特に授業の資料として使うのにはほんとうに便利だ。検索が容易なのもありがたい。ただ、キンドルの検索機能はかなり不備があり、ほんとうに網羅的な検索になっていないことが多い。改善が望まれる。
電子書籍のもう一つの利点は、図版、特にカラー図版を多数収録している文庫本の場合である。紙の本でも大型本ならば図版の細部まで確認できるだろうが、文庫本の場合、いくら元の画質が良くても、いかんせんサイズが小さすぎて、細部がよくわからないことが多い。その点、電子書籍ならばパソコンの画面一杯に拡大してみることができるし、大型テレビのスクリーンに接続してさらに拡大して鑑賞することもできる。
最近購入した『菅江真澄 図絵の旅』(角川ソフィア文庫、2023年)なども、図絵を拡大すると細部までよくわかり、編者による解説もそれだけよく呑み込め、より興味深く読める。以前に購入した浅野和生著『ヨーロッパの中世美術』(中公新書、2009年)には美しい写真が多数収録されていて、それらも拡大して細部を確認できる。ただ、写真版収録の際の解像度の限界があって、細部までいつも鮮明とまではいかないが、それは新書版に対しては要求過剰というものだろう。