小学生を放課後などに預かる放課後児童クラブ(学童保育)で働く、指導員の待遇改善が遅れている。
立場が安定せず、雇い止めも頻発。深刻な労働問題となっていることを受け、国や住民が改革に乗り出し始めた。
「言い分すら聞いてもらえなかった。 子どものために働いてきたのに」。
東北地方の学童保育施設で指導員を務めた50代の女性は、今年に入って突然解雇を通告された。
約3年間パートとして勤務。
時給800円で平日に4時間前後働き、土曜日や小学校の長期休暇中も出勤した。
宿題を手伝ったり、子どもたちの弁当を作ったり。
かんしゃくを起こしやすい児童にも粘り強く対応し、地道に信頼関係を築いた。
だが地域関係者でつくる運営委員会は、役員の負担が重いなどとして、運営から手を引くことを決定。
パート指導員3人との契約を2016年度末に打ち切り、社会福祉法人に施設運営を譲った。
大阪府の施設でも2014年度、勤務時間短縮の要請を断った指導員が、一方的に辞めさせられた。
同様の事案は全国的に起きており、背景にあるのは指導員の立場の弱さだ。
認定資格がなく、専門知識を持たなくても働けるため、人件費の安い非正規職員が増加。
職務上の地位が保障されてこなかった経緯がある。
全国営里保育連絡協議会の2012年の調査によると、公営、民間の各施設で働く指導員の数は推計約9万2500人で、8割近くが非正規職員だ。
大半は年収が150万円を下回り、勤続年数も3年以下と短い。
一方、学童保育の需要は高まるばかり。厚生労働省の集計では、昨年5月時点の登録児童数は約109万人で、2015年同期と比べ約7万人増えた。
こうした中、国は2015年度に認定資格「放課後児童支援員」を新設した。
保育士など一定の条件を満たし、計24時間の研修を受けた人に付与される。
本年度からは勤続実績などに応じ、月額約1万~3万円を賃金に上乗せする制度も始まった。
地域で指導員を支える動きも活発だ。
福岡県宗像市の吉武小学校学童保育所は、3年前まで民間企業が運営主体だったが、子どもを外遊びさせない方針に反対する指導員の退職が相次いでいた。
困った住民たちは地域の運営協議会として管理権を継承。
指導員との雇用契約を短期から常勤へと改め、現場の声を反映しやすくすると、児童数が増えたという。
学童保育の主役は児童と指導員。
指導員の生活を保障し、働きやすい環境をつくれば、子どもも楽しく通えるようになる。
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