遺伝子を改変して拒絶反応のリスクを減らしたブタの腎臓を人の患者に移植する治療法の臨床試験(治験)を、米マサチューセッツ総合病院の河合医師らのチームが早ければ来年に始める方向で計画していることが5月16日、分かった。
米食品医薬品局(FDA)と既に協議しており、認められればブタから人への腎臓移植の治験は世界初となる可能性がある。
チームは医療としての確立を目指す。
ブタの腎臓や心臓の移植は、人からの提供臓器不足を補う目的で研究が進む。
過去にも実施例はあるが、他に治療法がない患者や脳死の人への実験的な試みにとどまっている。
米国では今年、ブタの心臓を移植した男性が約2ヵ月後に死亡。
心臓がブタ特有のウイルスに感染していたのが一因との見方があり、腎臓の治験でも、安全性や、移植後に長期間機能させることが重要な課題となる。
サルに40例ほど移植した実験では500日以上腎臓が機能しているケースもある。
河合医師は「移植した腎臓が3年以上生着するのを期待している。
良い成績が出れば、臓器提供者(ドナー)がいないために人工透析から離脱できない患者の希望になる」と話す。
チームは遺伝子改変ブタを開発する米企業イージェネシスと協力。人の免疫による攻撃を避けるため、標的となるタンパク質を作るブタ特有の遺伝子を働かなくしたり、人のタンパク質を作る遺伝子を入れたりと10力所以上改変している。
今秋ごろから、免疫の機能を幅広く抑える新たな抗体薬を人同士の腎移植で試験的に使って効果や安全性を調べる。
有用と分かれば来年にもこの抗体薬を使いブタから人への移植の治験に進む。
参加者は血管がもろく透析が難しい腎不全患者や、65~70歳くらいで手術に耐える体力はあるがドナーがいない患者を想定している。
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