政府は情報通信技術(ICT)を生かした「スマート農業」の普及を目指し、今春から、農村の光ファイバーや無線基地局などの通信ネットワーク強化を加速させる。
施設整備に取り組む自治体などを交付金で支援するほか、地域の実情に合った導入方法に関する指針を3月にも新たに策定。
農作業の負担軽減や経営効率化につながる環境整備を後押しする。
携帯電話の入ロカバー率は99・99%を超えるが、農林水産省の試算では携帯がつながらない全国の農地は福島県の耕地面積に当たる約14万ヘクタールに上る。
通信網の拡充が急務で、同省は2021年度予算で農山漁村振興の交付金に通信環境対策を新設。
市町村などが主体となり、全国13地区で地形や既存施設を踏まえた整備計画の策定が進む。
2022年度は交付金を活用し、計画を踏まえた整備事業に乗り出す地区が出てくる見通し。
農水省の担当者は、通信インフラの基盤となる光ファイバー回線の敷設に加え、「無線規格は地域のニーズに応じて組み合わせることが重要だ」と話す。
例えば、高精細な映像を低遅延で伝送できる第5世代(5G)移動通信システムを活用した「ローカル5G」は農機の無人走行や、家畜を識別し健康状態を把握するといった高度な運用が可能となるが、導入コストは高い。
一方、水田への自動給水や、鳥獣被害を防ぐためイノシシやシカなどを自動で捕獲するわなの管理では、広域でつながる「LPWA」と呼ばれる規格が適し、消費電力や経費も抑えられる。
こうした特徴を踏まえ自治体が単独で整備するのはハードルが高く、農水省は昨年7体らが参加し構想作りから運用まで幅広くサポート。
作成中の指針では、設備導入の手順や留意点を解説する。
農事組合法人の布目沢営農(富山県射水市)は自動で直進する田植え機や水管理システムを導入し、担当者は「作業効率が上がった」と話す。
支援組織ではこうした実用例などの情報発信も強化する計画だ。
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