浦和の「新井商店」で「COEDO」を飲んだ2日後、偶然にも川越に行くことになった。
仕事が終わって、腹が減ったなと居酒屋を物色していたところ、意外にも立ち飲み屋を発見した。しかも16時というのに、もう営業している。確か数年前、川越に来て立ち飲みを探したところ、一軒も見つからず、仕方なく「かぶら屋」に入った。苦渋の決断だった。
「川越立ち呑み酒場 いっしょけんめい 六軒町一丁目商店」という看板がかかった店。新しくできたのだろうか。店の扉は開けはなたれ、かなりオープンな造りだ。
だが、それがかえって入りにくい。
人は「さぁ、どうぞ」と大手を振られると、かえってひくものである。
というのも、一見としては、少し店の前で様子をうかがいたい。だが、店がオープンすぎて、店の前で止まれない。止まったら、もう店に入るしか選択がなくなるのだ。とりあえず、店を過ぎ去るふりしてやり過ごした。そして、思い返したかのように、後に戻り、深呼吸して店に入った。これまで、何百軒もの店に入ってきたが、やはり緊張するものはする。
メインカウンターにはすでに常連らしい客が酒を飲んでおり、そこに入っていくには少し勇気が必要だったので、店の奥にあるちょっとしたテーブルに陣取った。店内を眺めた。串揚げの店のようだ。
外観はともかく、店内は東京の立ち飲みのようだった。何の変哲もない店。いや、大阪を真似した東京の立ち飲み屋のさらに模倣。だから、店が無味無臭になっている。個性がないといってもいい。
串揚げの店ならば、「ホッピー」以外に選択肢はないと思っている。
「ホッピーセット」の白(420円)と「もつ煮込み」(390円)をオーダー。
店員はまだ若く、カウンターに張りつく常連らとの話しに盛り上がっている。それは決して悪いことではないのだが、どうもその姿が鼻につく。その嫌悪感はどこからくるのだろうか。多分、店員が受け身の姿勢ではなく、積極的に常連へ話しかけていたからかもしれない。
ホッピーセットがきて、ボクは「5本盛り」を追加した。串揚げの店にいったら、だいたい初めはおまかせのセットを頼む。それで、店の真価が分かる。良店ならば、積極的におすすめのものを出すはず。
「もつ煮込み」は淡色系味噌を使用した、これまた変哲のない「にこみ」。スープからいただくが、随分と若い味だった。
「5本盛り」。
「豚カツ」、「白身魚」、「チーズ」、「たまねぎ」、「れんこん」。
バラエティにまとめたが、あたりさわりがないようにも感じる。「沖縄スパム」というのが唯一目をひいたが、それは盛り合わせに入ってこなかった。単品で頼めということだろう。
「串揚げ」の味も没個性的だった。とりたてて、何かに言及できそうもない。
相変わらず常連らは大声で話を続ける。
やっぱり、立ち飲みは雰囲気だよな。
ボクは心の中で反芻する。
立ち飲み屋はグルーブ感だよな。
また、ボクは心の中で反芻する。
外見や料理なら模倣もできるが、人が手をかけて行う雰囲気づくりは真似してできるものではない。
埼玉県、いやあえて言えば千葉県も、こういう東京の模倣ばかり。特色がなくなってしまい、都内に通う人が多数派になったからなのだろう。
でも、せっかく川越というブランドがあるのだから、それを生かさない手はない。幸いにも、この街にはマイクロブルワリーがある。地産地消できる素地はあるのに。
「焼酎なか」(200円)1杯のお代わりで店を後にした。
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