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福井駅で仕事の解散となったのは、まだ陽も高い14時過ぎという時間だった。
H部さんは、この後、実家がある京都に帰るという。
ボクも行こうかな。京都に。
こうつぶやいたのがきっかけで,ボクらの珍道中はまだまだ続くことになった。
まるでロードムービーのような展開となった。
だが、特急サンダーバードの時間まで、小一時間もある。ボクらは酒を飲んで時間を潰すべく、福井駅周辺で開いている居酒屋を物色した。
だが、店は開いていない。そこで、ボクらは蕎麦屋に入り、福井の地酒を1合ずつ飲んだ。
蕎麦も食べず、ただ酒だけを飲む失礼な客として。
サンダーバードの車中でも、カップ酒を買い込み、酒盛りしながら京都へ向かった。京都に着き、H部さんの馴染みのある店に行くことになった。
場所は河原町。
京町作りの家をカフェバーに改築した店というのである。
京町屋というものがボクには分からなかった。
だが、H部さんの説明によれば、京町屋とは、中庭があり、窓には格子がつき、通り側に面した家の面に犬矢来と呼ばれる垣根のようなものを置くという。この他にも特徴は多々あるようだが、H部さんはごく完結に説明してくれたのだった。
京町屋のカフェバーはとても素敵だった。
古い木の造りがとても優しく、灯りもふんわりと暖かみがある。
お店を切り盛りするお姉さんが、また素敵だった。ショートカットのよく似合う、いかにもフランス帰りというオーラを放っていた。
ボクらが座った背後にある本棚には写真集や画集などが整然と置かれ、センスのよさを感じさせてくれる。
ロフトが大きくなったような2階には頼りなげな梯子で昇り降りするらしく、その上には本棚や植物などが無造作に置かれていた。
どうやら、お店にする前は住居だったらしい。
入口と反対方向にある窓の外に、例の中庭があり、井戸のようなものと小さな木が植えられている。
いかにも風流である。
ボクはいとも容易く京都のど真ん中に連れていかれた気がした。
ボクは「ギネス」を頂いた。
大きな木のテーブルに置かれた濃厚の黒いビロードはセピア色の室内に美しく映えていた。
京都の空気に触れながら、ギネスを飲み、そしてお姉さんのフランス話しを聞く。
そうすると、一体ボクはどこにいるのだろうという錯覚に陥る。
つい、さっきまで日本海の荒波を見ながら、日本酒を飲んでいたのに、今こうして京都の古民家でギネスを飲むなんて。
ランプのような灯りがお姉さんの横顔を照らす。
暗闇が磨りガラスを通って、お店の中に入ってきた。
2杯目のギネスを飲み干して、ボクらは店を辞した。
京都とフランスの邂逅。そしてダブリン。
けれども、なんとも自然。
古くて新しい。
時間と場所を越えて、新しいものに触れているような気がする。
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