かつて、地ビールといわれていたビールが、最近になって再び脚光を浴びている。クラフトビールと名前を変え、大衆化しつつある。クラフトビールの専門店も都内のあちこちにできた。
その起爆剤になったのが「IPA」といわれるビールである。
「IPA」とは「インディアン・ペールエール」の略だが、19世紀、英国はインドへビールを輸出するために、長い船旅でも保存がきくようにと、大量のホップをいれたというペールエールが、このIPAの由来といわれている。この「IPA」が今や日本のあちこちのマイクロブルワリーでせっせと製造されている。
クラフトビールを飲ませる専門店が、新橋にもあると聞いたので、早速行ってみた。
「IBREW」。烏森の最深部。アイブリューと読む立ち飲み屋である。
しかし、新橋の立ち飲み屋は変わり身が早い。ちょっと目を離すと、すぐに新しい立ち飲み屋が出てくる。それだけ、競争が激しいということだが、東京の立ち飲みのトレンドを真っ先に取り入れるのが新橋の立ち飲み屋の特徴だ。クラフトビールの立ち飲み屋もまさにひとつのトレンドである。
烏森の中心部から若干南に行ったエリアにある「IBREW」。
「IBREW」というから、洗練された店だろうと踏んでいたが、恐らく居抜きで入ったであろう店舗にクラフトビールの店はあった。こじんまりとした店。入口は通り沿いになく、店舗の脇に入口がある。これが非常に分かりにくい。
店の中は中央にアイランド上の大きなテーブルがある。ここで思い思いに飲めるレイアウトになっている。
クラフトビールは日替わりで全10種類。これが全て樽生で飲めるのだから素晴らしい。
「OH!LA!HO BEER」やヤッホーブルーイングなど、クラフトビールの中でも比較的メジャーなビールがある一方、「ひでじビール」や「ロマンティック・ビレッジ」といったマイナーなビールもラインナップされている。
時代は変わったのだなとつくづく思う。
かつて、東京にあって、地ビールの樽生はこんなにたやすく飲めなかった。現地に行って、ブルワリーの併設レストランで堪能するというのが、これまでの地ビールだった。それが、こうして様々なクラフトビールを、しかも樽生で楽しめるなんて。
まさに隔世の感がある。
レギュラーサイズ(210ml)390円、ラージサイズ(410ml)が690円。それほど高くない値段にもびっくり。
そのビールも「IPA」はもちろん、ペールエール、ポーターにラガーと様々なビールが用意されているのもうれしい。ピルスナーがないのもひとつの特徴といえる。
まずは、その「IPA」からいってみる。
「OH!LA!HO BEER」の「サンダーボルトIPA」をラージサイズで。
色はピルスナーとほとんど変わらない。
飲んでみる。やはりというか、ホップが強い。これが「IPA」か。ホップが強いビールは実は苦手だ。
サントリーのプレモルが自分はあまり好みではないし、薫りの強いビールは、つまみを脇役にしてしまう可能性をはらむ。両者持ちつ持たれつという関係がベストである。
だが、強烈な爽やかさは悪くない。すっきり感とのど越しはビールの醍醐味であり、これについては申し分ない。
次に「ひでじビール」の「紫芋ラガー」をいただく。
この手のビールはかつて、けっこう飲んだ。例えば、「コエドブルワリー」でも川越の名産である芋を用いたビール。いや、厳密に分類すると発泡酒になってしまうのだが、これがかつての地ビールという印象を未だに持つ。
その「ひでじビール」。伝統のクラフトビールとでも言おうか。
遥か宮崎より旅をしてきたビールたち。「酵母よ!ありがとう」と言いたい。
つまみは「オリーブの盛り合わせ」(504円)。これをつまみながら、ビールを飲む。
クラフトビールは食中酒ではないのだろう。つまみのチョイスも難しいが、この店では「カキのハーブマリネ」、「レバーペースト」など、あてにも工夫を凝らしている。
地方創生などという陳腐な政策ではなく、地方にしかできない様々な資源がたくさんある。
クラフトビールもそのうちのひとつだろう。
そして、東京にもこクラフトビールが飲める立ち飲み屋が現れたことが何よりも嬉しい。
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