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日曜日の昼下がり。上野の美術館で時間を過ごし、その余韻に浸りたいから、ボクはそのまま上野の山を下りて、アメ横へと向かった。
無論、酒を飲むためである。
この日は足を棒のようにして歩いたから、座って飲みたいなと思って、居酒屋を物色した。
安価な居酒屋はガード沿いから1本、昭和通り方面と並行する筋に固まっている。
「たる松」は一見大衆風だが、値段は高い。
「大統領」は入りやすいが、エネルギーを使うから、この日の気分でないし、ましてや「磯丸水産」は一人酒場ではない。
「一力」みたいな、ある程度腹がたまる居酒屋がいいなと思って考えていたら、「神田っ子」の隣の店舗にはまだ行ったことがなかったのを思いだした。
そうそう、「えんぱち」って名前の店。なんか、落語家みたいな、そんな居酒屋。
看板には「やきとり居酒屋」とある。系統的には古そうな店。「一力」や「神田っ子」と同じグレードの店と思われる。
ちなみに「一力」は既に閉店した。「大統領 支店」と海鮮居酒屋の波状攻撃に駆逐されたというあんばいだ。
「えんぱち」に入って、まずカウンターに陣取った。
メニューは多い。だが、メニューの大半が500円以上である。
「あじフライ」(500円)、「水ぎょうざ」(500円)、「じゃがいものベーコン炒め」(500円)、「生野菜」(500円)、「山芋揚げ」(500円)etc。
この値段の付け方が安易で胡散臭い。これって計算しやすいための値付けなんじゃないかと怪しささえ感じさせる。
だが、必ずしも500円均一ではない。
「玉子焼き」(550円)、「豚焼き肉おろしポン酢」(580円)。ふむふむ。一応、値付けには何かしらの意図があるようだ。
そこで、飲み物に目を向けてみる。
瓶ビールが550円。生ビールは650円。
高い。いまどき、600円を超える生ビールにはなかなかお目にかからない。
これって既得権益なんだと思う。
自動車整備に例えるなら、車検。このおいしい既得権益にニュカーカマーが次々と新規参入する。だから、SSの車検や車検代行業が安価な値段で車検を行うのだ。同じことが居酒屋業界でも起こっている。
600円を超える生ビール。ボクはこのビールは買わない。だったら、「えんぱち」から2、3分の「キリンシティ」(現在は閉店)に行く。同じ金額で、極上のビールが飲めるから。或いは、「たきおか」や「カドクラ」に行く。圧倒的にビールが安価だから。
だから、「えんぱち」でビールを飲むのをやめた。
「ホッピーセット」は450円。これでも値段的に不満だが、とりあえず、我慢して頼んだ。
酒肴には串焼き。
「もも」は3本で450円。
ブー。思わず心の中でブーイングだ。
「はつ」2本で350円。
ブー。
だが、食べてみないと評価できない。その値段に相応しい代物か否か。
そして、すぐに出てくると思われる「冷やしトマト」(350円)をオーダーした。
あぁ、だがはっきり言おう。
つまみはこの価格には見合わなかった。
どんな焼き鳥が出てくるのかとワクワクしていたが、肉やややかたく、もちもち感には乏しい。「はつ」だってかたい。それよりもボリューム感のなさ。
何故にこんなに高いのか。あぁ、きっとこのお店はいい時代を過ごしてきたのだなと思う。
これならば、はじめから「たきおか」に行っていればよかったなと後悔の念。
ホッピーのナカ(200円)を1杯頼んで、早々に出た。
2週間に一度、「えんぱち」の前を通るけれど、もう二度と店には吸い込まれないと思う。
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