マークが部屋から出て行ったのを見て、自分も外出の支度をした。インド第二の都市、ボンベイを散策してみようと思ったのだ。外に出ると、歩道の一角にチャイ屋を見つけた。すぐに駆け寄り、店のオヤジにチャイを一杯注文すると、あっさり彼は「No chai」と言った。え?チャイがない。それなら彼が今調理している飲み物はなんなんだ。
大鍋の中を覗いてみる。チャイと同様、何かを煮出しているようだ。だか、漂ってくる香りが違う。その飲み物はコーヒーだった。チャイはインド北部の飲み物で、インド南部ではコーヒーを飲むということはきいていた。ということは自分はもう南インドに足を踏み入れたというのか。
コーヒー屋は北インドのチャイ屋と同様に町の人の社交場だった。多くの人が露天のコーヒー屋で石に腰掛け、談笑しながら、コーヒーを味わっていた。その中で一人異彩を放っていた老人がいた。独特の足捌きと手の動きをしながら、人々の間を歩いている。インドの伝統芸能なのか。表情もまた独特である。目は寄り目でほぼ表情がない。時折、身体を動かさず首だけを左右に動かした。我々が知っているインド人特有のあの動きである。合掌しながら行う首だけのアイソレーションは、単なるステレオタイプのインド人観ではなく、実際にインドでも行われているものなのかと感動した。
コーヒーは一杯5ルピーでチャイとほぼ同じ値段だった。またチャイと同様、コーヒーもまた甘ったるかった。けれど、この苛烈な暑さのインドではこの甘い飲み物がとても合っていた。たちまちわたしは南インドのコーヒーも好きになってしまった。
わたしはとうとう南インドに足を踏み入れたのだという自覚が芽生えてきた。
それにしてもボンベイ(ムンバイ)は、チャイじゃなくてコーヒーなんだな。
調べてみると、インドってコーヒーの産地でもあるんだな。知らなかった。そしてボリウッド、ここにあるんだな。そりゃボンベイから来てるんだからここだよなあ・・・。
南インド屈指の巨大都市で、どんな事が起こるのか。それとも、都会故にさして起こらないのか・・・。
更新楽しみにしてるよ、師よ。
インド第二の都市といっても、そんなイメージはなかったなぁ。もっとたくさん書こうと思っていたけど、コーヒー屋の話題で終わってしまった。ボンベイの巻も長くなりそうだよ。