2回続けて、名店の閉店を伝えるとは思ってもみなかった。秋葉原界隈では随一ともいわれた路麺の店、「あきば」が突如閉店していたのだ。しかし、全く寝耳に水。突然の閉店の理由はどうやら、ご主人の石月さんが急逝されたとのこと。
拙ブログの小欄では「あきば」は2回登場した。いずれも「冷やかけあきば」(560円)。掛け値なしにうまいそばで、この界隈のそばでは群を抜いていた。紹介したのはたった2回だったが、実際にいただいたのはもう何十回。いつも冷やしばかり注文してきたが、一度だけ温麺をもらったことがある。
「鴨南蛮」。
確か、これはレギュラーメニューではなかったと記憶している。冷やしばかり食べてきたが、実は温麺の実力も凄かったことを最後に伝えたいと思う。
「あきば」の凄みはやはりそば。絶妙なコシとのど越しのそばは多くの人が認めるとこれ。しかし、温かいつゆでも同じパフォーマンスがだせるかといえばそれは名店でもなかった難しい。一度だけいただいた「鴨南蛮」は、つゆに浮かせてもそのコシとのど越しは変わらず、ぐいぐいとくるプツンとした噛みごたえに大きな感動を覚えた。
驚いたのはそれだけではない。真骨頂は鴨肉の出汁とマッチするつゆ。「冷やかけあきば」もそうだが、「あきば」のつゆは薄口で優しい。かえしがしっかりしてるから、つゆのまろみはその賜物だ。だから、薄口でもうまい。では、温麺の場合はどうか。とりわけ、鴨が入って、その鴨出汁に負けたりしないか。いやいや、薄口ながら強さがあるのが、「あきば」の凄み。しっかり調和し、「あきば」ワールドが堪能拡がった。
もはや、このそばがいただけないとは。秋葉原のそば界は貴重な名人を失った。
享年66歳。まだまだだったと思う。ご冥福をお祈りいたします。
蕎麦界の計りしれない損失だと思います。