明日11月2日からの2日間で決勝が行われる神田カレーグランプリ。今年も恐らく行けないだろうと思いつつ、過去のグランプリ受賞のレトルトカレーで思いを馳せた。
「お茶の水、大勝軒」。
ご存知、ラーメンの神様、故山岸一雄さんが真の後継として監修したお店である。
自分は2000年代初頭、数年間神田で働いていたが、もっぱら行ったお店は神田駅前の「大勝軒」だった(「中華さすらい」未収録)。当時はまだお茶の水に「大勝軒」はなく、その後会社は御徒町に移転したため、「お茶の水、大勝軒」にはなかなか行けなかった。
神田カレーグランプリに初めて出かけたのは、2017年のこと。その時、歴代受賞者を眺めていたら「大勝軒」の名前を見つけて驚いた。
つけ麺だけじゃないのか。
しかもこの年、グランプリまで獲得した。
調べると「大勝軒」本店の創業時に提供していた「カレー中華」を「お茶の水、大勝軒」店主と山岸さんが共同で復刻したのだという。その「カレー中華」をベースにして作ったのが、2016年の神田カレーグランプリで準グランプリを獲得した「カレーライス」だという。2017年にグランプリをとったカレーは常連客の裏メニュー「カツライスカレー」である。
そうした事実は知らなかったとはいえ、侮っていた。
ラーメン屋さんのカレーだろ、と。
それから時が流れ、コンビニで見つけた、このレトルトカレーを購入した。
歳をとって最近よく思うことは誰もが間違いなく物語を背負っていること。それは人だけではなく、人が関わる全てのものに。会社も地域も、そして料理も。天塩にかけた山岸さんのカレーが復活しただけで、それはもう奇跡のドラマではないだろうか。
山岸さんの故郷、長野県山之内町から続く連綿とした物語である。たかがカレーだが、そこに流れる様々な思いが、このカレーに溢れている。
カレーの本来の味の中に横たわる様々な思いを味わいながら、いただく。
うまい。
朴訥なカレーである。とびきり何かを足したものでもない。子どもの頃に食べていたカレーのようで妙に懐かしい。カレーグランプリといえば、何か気を衒ったものを期待してしまう。必要以上にバイアスをかけてしまうが、細部にわたり、昔の味を微調整したのだろう。そのカレーは古来の日本のカレーと山岸さんの職人の味で満ち溢れていた。
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