宝塚で仕事を終えた後は、現地で一杯飲りたかった。
調べてみると何軒かの立ち飲みもあるようだ。
たが、これから京都に行かねばならない。ふりーまん師の新居に向かうのだ。昔、彼の家に行く時、京都で立ち飲みに寄ったため、到着が遅くなったことがあった。
「今日は立ち飲みに寄るなよ」
きつく、釘を刺されていたのだ。
阪急電車で京都へ。ふりーまん師の家に行くには、京都の四条で乗り換えをするのだが、その界隈が激混みだった。ほぼ外国人観光客。歩くのも困難なほどである。
ふりーまん師の新居は叡山鉄道の修学院という駅で、この日初めて、その駅へ降りたった。1日で初めて降車する駅が2つもあり、ちょっと嬉しい。駅を降りて、しばらく待っていると、ふりーまん師と愛犬、翁がやってきた。
彼らとは2年ぶりの再会だった。
翁はまず、自分の股間に顔を近づけ、くんくんと匂った。恐らく、これが挨拶なのだろう。客の股間の匂いを嗅ぎ、甘い匂いがするのか、酸っぱいのか、はたまたイカ臭いか、それによって対応を変えるのだろう。酒場「翁亭」の主人として。
「翁亭」は架空の酒場である。「居酒屋さすらひ」唯一の架空酒場。そこで腕を奮ってくれるふりーまん師の料理を紹介したくて、「居酒屋さすらひ」にねじ込んだのだ。
実はふりーまん師の新居を訪問するに当たっては、ちょっと戦々恐々だった。天井裏には亀虫が大量発生しているらしいし、玄関の石置き場には様々な昆虫が住んでいるようだった。しかも、庭には大きな蛙が住み着いているともいう。この歳になると、虫が嫌いになり、もう普通に触ることすら出来ない。果たして、師の新居で平穏に過ごせるだろうか。
ところが、師の新居に行ってみると、そんな心配は杞憂だった。こぢんまりとしたいいおうちだったのである。
2年ぶりに来訪した珍客を翁が覚えていたかは分からない。でも、翁は師とととに、優しくもてなしてくれた。
まずはビールに枝豆が登場。
「翁亭」の特徴はビールグラスである。きっと名称があるのだと思うが、よく分からないが、ワイングラスに似た丸みを帯びたグラスにビールを注ぐ。ワインの場合、空気と混合させ、旨みを引き出すためにワイングラスがあるように、グラスは重要な役割を演じる。ビールも同じらしい。例えば、北千住の「ビアま 北千住」では、ビールの特性に合ったグラスで生ビールが提供される。
ふりーまん師のビール愛。こだわりの男はグラスだけでなく、料理にもその才が発揮される。テーブルには様々な料理が運ばれてきた。翁はそのご相伴に授かれると思っているのか、愛想を振り撒いている。かわいい奴。
たくさんの料理で師と翁は歓待してくれた。ただ、お互い酒が弱くなったな。
繰り返しになるが、「翁亭」は架空の酒場である。
さて、ビールグラスだけど、シュピゲラウっていうメーカーのビール専用グラスだよ。350mlが泡も含めてピッタリ入るのと、呑み口が薄造りなのが気に入ってる。
IPAとかラガーとか用の形の違うグラスがセットになってるやつもあったりするから、いろんな種類のビールを飲む師も買ってみたら。
なお、師はこだわりって言ってくれてるけど、俺は一杯目のビール飲み終えたら、後は何飲んでもなんの味もわからんからね。まあカッコつけてるだけだよ。
ま、またつまみ食べてビール飲みに来てよ。虫だらけの田舎で、翁とともに待ってるから。
料理の感想は重要だよ。それが作ってくれた人、素材を育てた人、命をもらった動植物への感謝だな。
子どもの頃なんか、そんなこと思ったこともなく、娘や息子が料理の感想を言わないことに、少しイラつくこともあるけど、自分だって昔そうだったなと思いとどまるよ。
ビールグラスか。
やっぱ風味が違うのかな。
最近、家飲みは激減してるうえ、ビールも飲まなくなっているから、グラスを買うことはないかな。
先週は祝日があったから、ついつい2回も家飲みしちゃったけど、その前の2週間は1回も飲まなかったよ。酒飲まないと調子がいいし。
カッコつけてるだけっていっても一杯目に全てをかけてるわけだから、こだわりの何ものでもないよ。一杯目が一番うまいからね。
今年も京都に行けたらいいなぁ。
ただ、今夏も暑いみたいだね。京都の夏はしんどそう。
5月でも熱中症リスクあるみたいだから、師も翁も、奥方も気をつけろよ。