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居酒屋さすらい 1027 - ありふれた立ち飲みのありふれた酒と肴 - 「立呑 串ごっち」(練馬区東大泉)

2016-06-21 22:58:58 | 居酒屋さすらい ◆立ち飲み屋

卒論の提出まであと2か月をきった。

ボクの卒論の進行は相当遅れていた。

ひとつの一文を書くと躓き、思案する。思い立って書くとまた躓く。一進一退を繰り返していた。

本来ならば4年生は出席しなくてもいいゼミの時間だが、ボクは指導教員にアドバイスをいただきたく、こうして月曜日の夕方、毎週ボクは大学に通った。

学食で飯を食べ、その後図書館で調べ物をして、指導教員に会い、アドバイスをいただく。本来ならば、その後まっすぐ家に帰って、卒論を書かなければいけないのだが、ボクは必ず途中下車して酒場に立ち寄った。

そうこの日も。

駅と駅の間を歩く立ち飲みラリーは、この西武池袋線ではやっていない。仕事して、勉強した後はもうくたくたでそれどころではなかった。

それどころか、ボクはあらぬことか、手っ取り早くケイタイで情報を得て、立ち飲みに行った。

この「串ごっち」もそうやって見つけた店である。

 

大泉学園という駅をボクは初めて降りた。

高速道路のランプがあるので、板橋のような空気が悪い街という印象を持っていたが、駅の周囲はどこにでもあるようなありふれた街だった。

お目当ての店はすぐに見つかった。

看板に大きく「串ごっち」と書かれている。センスがない看板だと思った。

 

立ち飲みは常に進化を繰り返し、本格派と廉価派の二極化に進みつつあるなか、どちらかといえばアイキャッチに神経を注いだ時代遅れな印象を「串ごっち」に感じる。

そのそも、串焼きの立ち飲みはよほどのストロングポイントがなければ、そうそう生き残っていけない。

店に入った瞬間、やはりこれはダメだと思った。

「お通し」100円。

黒板にはっきりと白墨で記されている。

かつて、何度か立ち飲み屋で遭遇したことのある「お通し」有料だが、ボクはやっぱり、この姿勢にがっかりする。その100円ケチって、もっと大きなものを失うことを店主は分からないのだろうか。

 

酒も酒肴も高くはない。

「黒霧島」280円。

「もつ煮込み」300円。

串焼きは軒並み100円だ。

それだったら、何故「お通し」代をとるか。

 

 「チューハイ」と「もつ煮込み」、そして、串焼きを何本かオーダーした。

ありふれた「チューハイ」であり、ありふれた「もつ煮込み」だった。

一人で切り盛りする店主は特に敏捷に動くわけでもなく、オーダーの支度にかかった。

なんとなくボクは「失敗した」と思った。

 

ボクは氷で薄まった「チューハイ」を飲み、小粒の身の串焼きを食べながら、数分間味気ない時間を呆けたように時間を過ごした。

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