1ヶ月前から実母が体調を崩し、週に2回ほど夕食を作りに行くことになった。彼女は難病を抱え、少しずつ躰も弱っていた。
親とは不思議なもので、いつまでも変わらないと思っていたが、齢はもう80歳になっていた。そんなある日、相当体調が悪いことを吐露される。ボクは入院を勧めた。まずは一回体調を戻すのが先決ではないかと。
すると、ある日旗の台のS和医大から連絡が入った。どうやら入院を決めたようである。S和医大には2年前も入院し、今回が二度目だった。
仕事を途中で切り上げて、S和医大に急いだ。実母は検査を受け、その結果は延々と待たされることになる。検査の結果を聞いたのは、もう22時近くだった。
「明日、またくるよ」。
実母に、そう言い残して病院を後にした。
どこかで、うまいものでも食べて帰るか。そうでもしないと気持ちが沈んでしまいそうだった。
「鶏樹」。
真っ先にそう思った。
2年前は、支店の方に行ったが、今回は本店にチャレンジしてみよう。けれど、こんな時間でも入れるだろうか。
踏切を越えて左に曲がり、店の前まで行くと、店内の賑やかな声が外まで聞こえてきた。思いきって、ドアを開ける。
「まだ、入れますか?」
若い店員さんが、にっこり笑ってカウンターを示した。かろうじて、カウンター席が一つ空いていたのだ。なるほど、思っていたよりも感じのいい店だ。どうも、敷居が高いと勝手に思い込んでいたが、実はそうではなかった。
さて、何にしようかとメニューを広げていると、お吸い物と納豆が出てきた。どうやらお通しのようだが、これは変わっている。
一口すすってみると、鶏出汁の優しい味がする。躰が温まって胃にも優しい。
まずは生ビール(大)(610円)から。サッポロの黒ラベルが嬉しい。
さて、まずは「ささみおろし」(550円)と「ももたたき」(780円)を注文した。
「ももタタキ」は「鶏樹」において、マストなメニュー。一方、「ささみおろし」は塩焼きのささみと大根おろしのコラボレート。
「ももタタキ」の旨さに絶句。若鶏のもも肉は断然柔らかく、ジューシー。
そして、「ささみおろし」は、淡白なささみを大根おろしが旨さを引き出す。串焼きではない、焼き鳥の味わいが実に深い。
2年前、ボクは元J車新聞社のS柳さんに連れられて、この店を尋ねたが、生憎の満員御礼。仕方なく東口店を訪ねたが、そのときのS柳さんの言葉が忘れられない。
「東口店は店主の息子がやっているんだけれど、味は断然本店の方がうまい」。
こんなことってあるのだろうか。多分、仕入れは同じだろうし、材料もおなじだろう。多分レシピも同じはずだが、味に差がつくのだろうか。
もう2年も前に行った「東口店」の味などとうに忘れてしまったけれど、言われると気のせいか、「本店」の方がうまいように感じる。多分、お店の雰囲気と店主の愛情がエッセンスに添えられているのかもしれない。その店主の方が、また気さくな方だった。カウンターに座る外国人に対し、英語と日本語のミックスでおしゃべりをしている。なんだか、この店が愛される理由がよく分かった。
いや、店主だけでない。ボクの前に立つ板さんのM尾さんもとてもいい人だった。
「リラックスしてますか?」
と優しい声をかけてくれるのだ。
生ビールを飲み干して、「プレーンサワー」(390円)に。「鶏樹」は、飲み物が充実していて、それなりに安価だ。
周囲の人らが、「レバー焼き」(390円)を頼んでいるのを見て、ついボクも勢いで、「レバー焼き」を頼んでしまった。
これが、またバカうまだった。これも、「鶏樹」のマストメニューだろう。
多分、これから旗の台にはしょっちゅう来ることになるだろう。毎回は来れないが、たまには来てみるとするか。
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