居酒屋さすらい 0655 - 気のせいなんかじゃなくて - 「カフェバー レフティ」（豊島区目白）

気のせいなんかではないっていうことは分かっていた。
その理由もよく分かっていた。

一瞬のすきま風にも似た。
それは、触れたくない痛みに吹きつけられていく。

でも、それはいつも背後にいた。
気が付けば。いつも。
そこからは逃げられない。
どうにもできない切なさ。

その笑顔。
そのリボン。
多分、優しさなのだと思う。

オスカー・ピーターソンのピアノ。
その特異なスケールが心の軋みに聴こえる。
ほこりっぽいテーブルに。
頬杖をついて。
ボクらは向き合っている。
時々、ハイネケンを口に運びながら。

随分と遠いところまで来てしまったと思う。
誰も知らない荒野に。
振り向いてみると。
振り向いてみると。
飛光のような涙がこぼれ落ちるように。

頬に触れてみる。
飛光のような涙は幾度もここをつたっていった。
そんな気がする。

ちょうど。
８か月前と同じ温もり。
この目白の夜空に。
だから。

気のせいなんかじゃなくて。