![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/13/7031369575dc634d98fec94f6178c445.jpg)
10月27日正午過ぎ。御徒町方面からアメ横を歩く。
平日にも関わらず、多くの人で賑わっている。
乾物屋や魚屋の店員が発するだみ声に混じって聞こえてくるのは異国の言葉。中国語もあれば英語だってある。中にはハングルやタイ語だって聞こえてくる。
今やアメ横は日本の観光地だ。
その雑然とした小路をひたすら歩き、ほぼアメ横の端まできて、ふと迷った。
『あれ?確かこの辺じゃなかったか?』
わたしはとある居酒屋を探していた。
店の名前を確認しに。
7月13日、わたしは上中(うえちゅん)のゲート近くにある居酒屋で会社帰りの道すがら喉を潤した。
モルツの中ジョッキが僅かに300円で飲めるリーズナブルな店だった。
ふらりと立ち寄ったこの店の名前を不覚ながら書き記しておくことを忘れたのだ。そうしてこの日、店の名前を調べに昼休みを利用して出掛けた訳なのだが、その店がとにかく見つからない。
確か、一階は空き店舗になっていて、ステ看板やメニュー表が殺風景に並べられていたはずだが、その一階部分に空きのテナントは見つからなかった。したがって、その酒場も見つからないのである。店の看板を手掛かりに、それらしい名前を探すのだが、やはりない。
どうやら、居酒屋は忽然と姿を消してしまったようだ。
だが、恐らくここではないかと踏んだ場所を見つけた。
そこは今や雑貨店(写真)となっており、かつての面影はない。だが店の形状がなんとなく似通っている。
確か、店の奥の階段を使って2階に上がったと記憶していたが、既にその階段も跡形もなく消えている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/b6/6d9d7e2e36ab0e67d64df38197b3c6e4.jpg)
わたしは2階の窓を見上げてみた。
その向こうに生活を感じさせるものはなく、ただただ暗くなっている。窓ガラスには様々なものが貼られた形跡が残っており、象の形をかたどったセロテープの残骸を見つけたとき、そこが3ヵ月前に訪れた店で間違いないと確信した。
風采の上がらない店だったが、手作りで店の模様をあつらえた優しい雰囲気の店だったと思う。
この店の雰囲気を何といい表せばいいのか。
ひとことで言ってしまえば、「チープ」。
だが、その影には涙ぐましい努力の跡がうかがえた。例えば、テーブルや椅子のチョイス。安っぽく見える白木のこじんまりとしたそれらは、およそ飲食店のものとは思えない。
わたしはこうした風景をよく見かける。タイ料理屋において。個人レベルで開店したタイ料理屋の多くが白木のこじんまりとした食卓のようなテーブルを用いているのを思い出した。
この店の女性の店員さんは容姿といい、日本語を母語としない抑揚の言葉遣いといい、異国の方であることは間違いなく、はっきりと断言こそできないが、顔立ちや店のこの装飾などを見て、わたしは彼女らをタイ人であると勝手に推測したのであった。
店内はまるでドラマのセットのようにも見えた。
米国の人気テレビドラマ「ヒーローズ」のマシオカ演じる「ヒロ」と片言の日本語が意地らしい「アンドウ君」が酒を酌み交わす東京の酒場に見立てたわざとらしいセットのようでもあり、韓流ドラマ、イ・ビョンホン主演の「オールイン」に出てくる、度を過ぎた米国酒場のセットのように不自然だった。
そこが、バンコクにある日本料理店なのか、それとも米国ドラマのセットなのか、それほどアメ横にはミスマッチの店であったからだ。だが、部屋の窓を開ければ、雑然とした通りに建物がひしめき、多くの人間があちこちの店に入ったり、しかも、目の前には果物を串にさして売る露店のような店もあったりして、さながらそれはアジアのマーケット、見ようによってはニューデリーのマーケット「パハルガンジ」にも思えてくる。
店のBGMは、アメリカのオールディーズ。70年代の曲が中心にこれでもか、とヒット曲が続く。
さすがにパパス&ママスの「カリフォルニア・ドリーミン」が流れたとき、何ともいい知れぬ悲壮なストーリーが頭をよぎった。
頼んだ「煮込み」(300円)を運んでくれたのは、まだ若いい女性。
東南アジア系の顔つきの影にやや日本人の面影が見えたのは気のせいだろうか。そこで、わたしはあらぬ想像をしてしまった。店の隅で焼き鳥を焼く日本人のおっさんとタイ人と思しきおばさんは夫婦なのではないか、と。
そして、今「煮込み」を運んできたこの若い女性はその娘なのではないか、と。 もし、その想像が間違っていたとしても、この母娘には日本に至るなんらかのストーリーがあり、その裏には大きな夢があったことが想像できる。
「煮込み」は朱塗りのお椀に盛られて出てきた。味は悪くなかった。焼き鳥を焼くおっさんが作ったものなのか、それともおばさんの手作りのもなのか、は判断しかねたが、メニューにはオリエンタルなものは見当たらず、「やっこ」(200円)や「さといも煮」(200円)といったように全てが純和風のつまみばかりであった。
ほとんどのつまみが200円から300円。このリーズナブルな値段はアメ横でも1、2位を争うだろう。だがお客さんはわたしを含めて3人しかいない。立地の悪さは如何ともし難い。
最後に『当店イチ押し』という『モッコリ』というのを頼んだ。快活に『モッコリ下さい!』と。この飲み物はモルツと韓国の濁り酒『マッコルリ』のハーフ&ハーフ。
なんか、日本人が好みそうな卑猥な名称の商品がある、というのもアジアだなぁと再び感じさせてくれるのであった。
料理の味については特筆するものはなかったが、とにかく同店の良さはそのリーズナブルさと雰囲気。店に入ると一瞬のうちにアジアの安宿街にある食堂へあなたをいざなってくれる。
果たして、同店は店を閉めてしまったのか、それとも移転したのか、はたまた夜になればまた突如として店が現れるのか、今度は夜に確かめにいってみたい。
平日にも関わらず、多くの人で賑わっている。
乾物屋や魚屋の店員が発するだみ声に混じって聞こえてくるのは異国の言葉。中国語もあれば英語だってある。中にはハングルやタイ語だって聞こえてくる。
今やアメ横は日本の観光地だ。
その雑然とした小路をひたすら歩き、ほぼアメ横の端まできて、ふと迷った。
『あれ?確かこの辺じゃなかったか?』
わたしはとある居酒屋を探していた。
店の名前を確認しに。
7月13日、わたしは上中(うえちゅん)のゲート近くにある居酒屋で会社帰りの道すがら喉を潤した。
モルツの中ジョッキが僅かに300円で飲めるリーズナブルな店だった。
ふらりと立ち寄ったこの店の名前を不覚ながら書き記しておくことを忘れたのだ。そうしてこの日、店の名前を調べに昼休みを利用して出掛けた訳なのだが、その店がとにかく見つからない。
確か、一階は空き店舗になっていて、ステ看板やメニュー表が殺風景に並べられていたはずだが、その一階部分に空きのテナントは見つからなかった。したがって、その酒場も見つからないのである。店の看板を手掛かりに、それらしい名前を探すのだが、やはりない。
どうやら、居酒屋は忽然と姿を消してしまったようだ。
だが、恐らくここではないかと踏んだ場所を見つけた。
そこは今や雑貨店(写真)となっており、かつての面影はない。だが店の形状がなんとなく似通っている。
確か、店の奥の階段を使って2階に上がったと記憶していたが、既にその階段も跡形もなく消えている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/b6/6d9d7e2e36ab0e67d64df38197b3c6e4.jpg)
わたしは2階の窓を見上げてみた。
その向こうに生活を感じさせるものはなく、ただただ暗くなっている。窓ガラスには様々なものが貼られた形跡が残っており、象の形をかたどったセロテープの残骸を見つけたとき、そこが3ヵ月前に訪れた店で間違いないと確信した。
風采の上がらない店だったが、手作りで店の模様をあつらえた優しい雰囲気の店だったと思う。
この店の雰囲気を何といい表せばいいのか。
ひとことで言ってしまえば、「チープ」。
だが、その影には涙ぐましい努力の跡がうかがえた。例えば、テーブルや椅子のチョイス。安っぽく見える白木のこじんまりとしたそれらは、およそ飲食店のものとは思えない。
わたしはこうした風景をよく見かける。タイ料理屋において。個人レベルで開店したタイ料理屋の多くが白木のこじんまりとした食卓のようなテーブルを用いているのを思い出した。
この店の女性の店員さんは容姿といい、日本語を母語としない抑揚の言葉遣いといい、異国の方であることは間違いなく、はっきりと断言こそできないが、顔立ちや店のこの装飾などを見て、わたしは彼女らをタイ人であると勝手に推測したのであった。
店内はまるでドラマのセットのようにも見えた。
米国の人気テレビドラマ「ヒーローズ」のマシオカ演じる「ヒロ」と片言の日本語が意地らしい「アンドウ君」が酒を酌み交わす東京の酒場に見立てたわざとらしいセットのようでもあり、韓流ドラマ、イ・ビョンホン主演の「オールイン」に出てくる、度を過ぎた米国酒場のセットのように不自然だった。
そこが、バンコクにある日本料理店なのか、それとも米国ドラマのセットなのか、それほどアメ横にはミスマッチの店であったからだ。だが、部屋の窓を開ければ、雑然とした通りに建物がひしめき、多くの人間があちこちの店に入ったり、しかも、目の前には果物を串にさして売る露店のような店もあったりして、さながらそれはアジアのマーケット、見ようによってはニューデリーのマーケット「パハルガンジ」にも思えてくる。
店のBGMは、アメリカのオールディーズ。70年代の曲が中心にこれでもか、とヒット曲が続く。
さすがにパパス&ママスの「カリフォルニア・ドリーミン」が流れたとき、何ともいい知れぬ悲壮なストーリーが頭をよぎった。
頼んだ「煮込み」(300円)を運んでくれたのは、まだ若いい女性。
東南アジア系の顔つきの影にやや日本人の面影が見えたのは気のせいだろうか。そこで、わたしはあらぬ想像をしてしまった。店の隅で焼き鳥を焼く日本人のおっさんとタイ人と思しきおばさんは夫婦なのではないか、と。
そして、今「煮込み」を運んできたこの若い女性はその娘なのではないか、と。 もし、その想像が間違っていたとしても、この母娘には日本に至るなんらかのストーリーがあり、その裏には大きな夢があったことが想像できる。
「煮込み」は朱塗りのお椀に盛られて出てきた。味は悪くなかった。焼き鳥を焼くおっさんが作ったものなのか、それともおばさんの手作りのもなのか、は判断しかねたが、メニューにはオリエンタルなものは見当たらず、「やっこ」(200円)や「さといも煮」(200円)といったように全てが純和風のつまみばかりであった。
ほとんどのつまみが200円から300円。このリーズナブルな値段はアメ横でも1、2位を争うだろう。だがお客さんはわたしを含めて3人しかいない。立地の悪さは如何ともし難い。
最後に『当店イチ押し』という『モッコリ』というのを頼んだ。快活に『モッコリ下さい!』と。この飲み物はモルツと韓国の濁り酒『マッコルリ』のハーフ&ハーフ。
なんか、日本人が好みそうな卑猥な名称の商品がある、というのもアジアだなぁと再び感じさせてくれるのであった。
料理の味については特筆するものはなかったが、とにかく同店の良さはそのリーズナブルさと雰囲気。店に入ると一瞬のうちにアジアの安宿街にある食堂へあなたをいざなってくれる。
果たして、同店は店を閉めてしまったのか、それとも移転したのか、はたまた夜になればまた突如として店が現れるのか、今度は夜に確かめにいってみたい。
そして、案の定閉店していましたか。
「マイスーパースターズ」。
この看板は、てっきり下の雑貨屋さんの名前とばかり思っていました。
カッコいい店名あったんですね。
早速、「店名不詳」を書き換えます。
あの親子はまだアメ横のどこかで働いているような気がしますね。
しかし、今pご無沙汰でしたね。
akaibuBLOGもあまり更新していないし、心配していました。
仕事が忙しいのかな?