もう成田は初夏の暑さだった。
風は爽やかだが、日射しは強い。京成成田駅から成田山の参道奥まで歩くと、軽く汗をかいた。
「川豊本店」で「うな重」(2200円)を瓶ビール(630円)で平らげ、店を出た頃にはまだ飲み足りない不磨だけが残された。
時刻はまだ10時50分。休日のこの時間に酒が飲める場所はあるのだろうか。
とりあえず、参道には幾つかの店を発見することはできるだろう。だが、この辺りは半分観光地。いやが上にも金額は張る。
すでに「川豊」で2,830円を使っており、これ以上の散在はできないと思って、参道をのぼる。
ラーメン屋の「まつりばやし」で大勢の外国人といっしょにラーメンと酎ハイを頼むというのも考えたが、なんかラーメンに食指が伸びず、スルー。とうとう、京成成田駅まで戻ってしまった。
ここまで来たらもう「ひっぱりだこ」しかない。ここのたこ焼きは本当にうまいし、2席しかないカウンターでは缶ビール(スーパードライ)も飲むことができる。そう思い、「ひっぱりだこ」に向かおうとすると、隣の店が立ち食いそば屋があることに気が付いた。
「こんな店あったっけ」。と思い、店の前で立ち止まる。よくよく考えてみるとたこ焼きよりも蕎麦のほうがいいかなと思い直し、すすけた暖簾をくぐってみることにした。
扉を開けて、少し戸惑った。
店が暗いのである。雰囲気も暗い。先客はひとり。店の奥に座っている。
テーブルは4つ。左手にはカウンター。テーブルは右手の2つに椅子があるが、左側は椅子がない。
店の入口にある食券の自動販売機の前に立ち、メニューを物色する。すると「つまみ」というカテゴリーがあるではないか。もしかすると、ここは居酒屋的機能を備え持つ、そば屋だったか。
「生ビール」(350円)と200円の食券を買って、カウンターに。
すると奥から、おじいさんがぬーっと現れ、食券を確認、「200円」食券を「メンマ」と注文すると、再びぬーっと中に入っていった。
店の名前は確か「みゆき」だったはず。
てっきり、わたしはおばさんが店を切り盛りしているとばかり思っていたが、意外な展開だった。
生ビールは「一番搾り」。「メンマ」は皿に大盛り。
外は初夏のような暑さだから、ビールはほぼ一気飲み。
そして、またもや食券機に立ち、「生ビール」の食券を買う。
ちなみにつまみは200円から「おしんこ」「冷奴」「イカゲソ」「しおから」「メンマ」「キムチ」「マカロニサラダ」。
300円が「ギョウザ」「モツニンニク」「ニラ玉」。
500円は「サバミソ煮」「イカ丸焼き」「手羽先串焼」「とんそく」「肉豆腐」「おでん」。
なお、カウンターではゆで卵が50円で売られている。
さて、奮発して500円の「肉豆腐」でも食べるか。
この店の中でもハイエンドな肴。「肉豆腐」。
どんなものが来るのかと思っているとステンレスの小鍋にたっぷりと入れられた「肉豆腐」が出てきた。
ものすごくボリューミー。
裏寂しい京成成田駅前の立喰いそば屋。
ふと頭をよぎるのは中島みゆきの「蕎麦屋」。
♪風は暖簾をばたばたなかせて、ラジオは知ったかぶりの大相撲中継。
あいつの失敗話にけらけら笑って、丼につかまりながら、おまえ♪
なんか、いいな。
土曜日の朝、立ち喰いそば屋。
この店はその後、2回ほど使った。
いつも店は開いているし、いつも空いているのがグッド。
おつゆの濃い、蕎麦で〆るのも悪くはない。
怪鳥もすっかり、成田に詳しくなったね。
神奈川県人なのに。
なんか、不思議。
健闘を祈ってます。
なにしろ、朝からやってるからね。
そうか、夜はもしかして、みゆきさんが切り盛りしてたりして。
「立喰い」になってるけど、椅子もあるよ。