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「潮の湯温泉」を出て、はてどうしようか悩んだ。
灯台の方へ向かうべきか、それとも港のほうに足を向けるべきか。
犬吠埼なら何度も行ったことがあるが、港はただの一度もない。灯台周辺は観光地だが、港は地元の人の生活圏だろう。
ボクは元来た道を引き返し、港の方に向かった。
外川の駅を通り過ぎると、急な坂道に出る。そこからもう目の前は海だった。
黒潮と親潮がぶつかる場所。それが銚子であり、5年続けて漁獲量は日本一である。
その壮大な海が今、眼前に広がる。
思わず、坂を駆け下りたくなった。
かなりの急坂を降りると、港に着いた。「犬吠埼観光ホテル」からすでに25分は歩いたはずだが、道を歩く人にはたった一人しか出会わなかった。人の気配が全くない。
さて、港周辺に店はないか。左右を眺めてもそれらしい店は一軒もない。
居酒屋には期待をしていなかったが、鮨屋くらいはあるだろうと踏んでいた。
けれども、店は一軒も見えなかった。
もう少し港周辺をうろうろしてみよう。
そう思い歩いて行くと、漁協の建物に行きあたった。もしかすると何かあるだろうと思ったが、予想に反して何もなかった。
さて、これ以上何も望めないかなと思った矢先、何かしら看板が見えてきた。
「居酒屋 海舟」。
しかし、その救世主はどこにも見当たらなかった。看板だけである。きっと、道を入った民家の一角にあるのだろう。
そう思って、再び歩き出すと、今度はクルマがたくさん止まっている建物が見えてきた。
「おや?店か?」と思い、歩き出すと、古い平屋の家に人が集まっている。店先でBBQをやっているようだ。
平屋の建物には看板があり、かろうじて何か字が書いてある。
「犬若食堂」。
これは渡りに船だった。
店に入るとかろうじてひとつだけ席が空いていた。
もう14時を過ぎたのに、客がだいぶ入っている店だった。
椅子に座ると、おばちゃんが出てきて、ボクにこう言った。
「ごめんね。もう『ミックスフライ』しかないの」。
「うん、うん。十分です」。
ボクはそう答えた。
斜め向こうに座るおじさんが缶酎ハイを飲んでいて、ボクもそれをもらうことにした。
店頭では近所の人たちなのか、地元風の人たちが大勢でBBQをやっていることもあり、店はごった返していた。もう誰が店員で、誰が客なのかもわからなかった。
客も店員も、みなため口で話している。
しかし、恐ろしく汚い、まさに町の定食屋である。
全てが無造作に配置され、装飾というものがほとんどない。それでも、時折芸能人が現れては、色紙にサインをしていくのだろう。壁には何枚もの色紙が飾られている。
やがて、「ミックスフライ定」(1,100円)が運ばれてきた。
その恐ろしくボリューミーなことといったら。
白身魚にカキ、そしてエビフライ。そのいずれも巨大である。
これはこれは。恐れ入った。
1,100円は決して安くはないが、この巨大なフライにボクは思わず震えた。
ソースをつけて、早速かぶりつく。
期待を裏切らないうまさ。
カシュっと衣の歯ごたえとともに、じわっとくる魚介のうまみ。
これはすごい。
微かにする潮の香りとともに、ボクは一気に最高潮に。
フライを一口食べて、ご飯を2口、そして、缶酎ハイ。
マジうまし。
途中で、缶酎ハイがなくなり、お代わりをいただくこと2回。
あっと言う間にボクはミックスフライとごはん、そして味噌汁、缶酎ハイ3本を平らげた。
満足だった。
壮大な風呂に浸かり、ボリュームのある海鮮の定食に授かる。
こんな贅沢な休日って。
海の近くというロケーションが、飯のうまさを倍加させているのは確かだが、気取らない店っぷりがまた味がある。
いつか、またここに戻ってきたい。
ボクはそう思った。
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