ボクらの夜は終わらない。2時半から酒を飲み、蕎麦屋を含めれば、この日3軒目の店へ。夜のアクセルを思いっきり踏み、フルスロットルで、向かったのはH部さんが「知っている」という京都の立ち飲み屋さんである。
京都は立ち飲み屋がないところだと思っていた。事実、ボクはヨドバシカメラの裏にある「ひょうたん」しか知らない。
友人のふらいんぐふりーまん師によると京都駅の南側にはいくつもの立ち飲み屋があるのだというが、わたしが知っている店は、「ひょうたん」だけだった。
それが、この河原町にもあるのだという。果たしてH部さんの後をついていくと、京都らしいたたずまいの割烹風の店に着いた。そして、入口から店内に入って、ボクは驚いた。
その店「たつみ」はおおよそ京都とは思えない大衆的な店だったからである。
てっきりボクは京都には大衆的な店はないと思っていた。
居酒屋なぞは「そんな下賤な」と一蹴されるものだと思っていた。だが、どうだろうか。この雰囲気と熱気は。
しかも、入口すぐの立ち飲みの一角は、ろくでななさそうな輩がけっこういる。それは「ひょうたん」の雰囲気とは明らかに異なっていた。
東京でよく見かける、しかも競輪場や競艇、そして競馬場近くにある立ち飲み屋の匂いに似ている。いわゆる「ろくでなし」系のそれである。
京都にも「ろくでなし系」があることに驚きを覚えた。
厨房をぐるりと囲むようにカウンターが並ぶ。店の奥は座りになっており、立ち飲みと座りの混成する店舗である。
カウンターの一角にボクらは立ち、「白鹿 吟醸酒」(490円)をオーダーした。
ボクの斜め前に立つ小柄な男は眼光の鋭い男で、明らかに危険な雰囲気を醸していた。ボクの右隣は足の悪い御仁だったが、杖を左側に立てかけ、しっかりと立ちながら酒をあおっていた。
メニューはかなり豊富だ。
「鯖のへしこ」「万願寺とうがらし天ぷら」(280円)「いもぼう」(480円)「はも皮」(280円)「むかご天ぷら」(280円)「てっぱい」(380円)「葉とうがらし煮」(280円)など珍しいものが並ぶ。
そうそう「土手煮」まである。
都の人は「土手煮」も食べるのだろうか。
それこそ「下賤な」と白い目が真っ先にそそがれる一品のような気がする。
その中から、「葉とうがらし煮」をチョイスした。
気取ることなく、ごく一般的な小皿で出てきたそれは、関東に比べると、やや薄味のいかにも京都といった味付けで、それはそれはおいしかった。
夜の19時、金曜日ともなれば店内には多くの人が入ってきた。いつしか立ち飲みのコーナーも満員に。
吟醸酒のおかわりと「万願寺とうがらしの天ぷら」。
青々としたとうがらしの歯ごたえのいいことよ。
本当においしい。どれも。
人の声が店内を包むように、ボクの満足も心に充ちてくる。
京都に大衆酒場があったなんて。
ボクはそれだけでもう満足だ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます