H田さんに初めてお会いしたのは怪鳥から誘われた草野球の試合でだった。怪鳥の友人たちが集ったチームにわたしも混ぜてもらい、その中にH田さんがいたのだ。
「鮨職人」と紹介はされたが、その風貌はそのイメージに直結しなかった。
大柄な体躯と豪放な物言いは職人の寡黙さと繊細さからは程遠かったのである。
ともあれ、そんなイメージを持っていたものだから、怪鳥からH田さんのお店に連れて行って貰い、彼の黙々と仕事をする姿を見たときはかなり驚いたのだった。
学芸大学の駅を降りてすぐ、少し雑然とした一角に清々しい店構えでその店「しお」はたたずんでいる。聞くところによると、なかなか予約すらもとれないらしい。雑誌「東京カレンダー」(アクセス・パブリッシング)でH田さんは、「期待の若手」として誌面を飾っているのだという。
とにかく、今目の前でてきぱきといい仕事ぶりを見せる人は、ちょうど一月前に1塁を守り、大声を出していた人と全くの別人のようだったのである。
「しお」は満員だった。
カウンターだけの8人も入れば、いっぱいになってしまう小さな店。だから、お客とH田さんの距離は近い。お客の会話に気さくなH田さんが、応える。お店の雰囲気は極めてなごやかだ。
まずは瓶ビールから。
銘柄はキリンのハートランド。
いやはや、なんとも清々しい。
清々しい、と言えば、お店全体が実に清潔で清々しい。
カウンターの一枚板はバリ島から取り寄せた古木とのこと。
耳を澄ませば、微妙にピアノジャズが流れている。
この清々しい雰囲気をどう表現すればいいのか。
外気の熱帯夜が嘘のように、お店には清涼感が溢れている。
さてさて、ハートランドを空けて、お酒を貰うことに。
怪鳥はいつもここで決まったお酒を飲んでいるという。
銘柄は藤平酒造(合)の福祝。
茶碗のような大きいぐい飲みでなみなみ注がれて出てきた。
そのぐい飲みの可愛いこと可愛いこと。
そして、お酒の優しく、また柔らかいこと。
「嫌いな食べ物はないですか?」というH田さんの配慮で並べられたお酒のアテをつまんで福祝を飲んでいると、怪鳥がおもむろに席を立った。携帯電話が振動したらしい。ひととおり、話しが終わって席に戻ると「知人が来るけどいい?」ということになった。
もちろん、こっちは構わない。
その知人とは、作家椎名誠さんらで構成する「怪しい探検隊」のメンバー、Tさんだという。
「怪しい探検隊」は高校生時分から愛読する大好きな本。そのメンバーの方が来られるとは何たる光栄なことか!
しばらくして、そのTさん汗をかきかき、恵比寿から駆けつけてこられたのだった。
Tさんはサントリーの広報を担当するなど、現在はフリーでマルチな才能を生かして様々なご活動をされているとのこと。だから、Tさんの話しはあらゆることに造詣が深く、また大変興味深いものばかりだった。うっとりと時間を忘れて、話しを聞いていると、いつしか福祝の杯を幾杯もお代わりし、わたしはすっかり人事不省の一歩手前、頭はトランス状態に陥りそうになっている。
そうかと思えば、いつしかカウンターには握りが出されるようになっており、それをつまみながら、またしても次々に酒が進んでいくのである。
握りは、こじんまりとした可愛いそれ。口に入れるとほろりとシャリが砕けて、ほどよく食べられる。大柄なH田さんがこうして繊細に握られるのは、技術とお客への配慮の気持ちにあるのだろう。
しかし、いかん!調子に乗って飲みすぎた。恐らく福祝を4杯は飲んでしまったか。わたくし熊猫が日本酒をこれだけ飲むのも珍しい。それだけ、お鮨とお酒がおいしかったってこと。
しかも、Tさんの絶妙なる話しがまたおいしさに彩を与えていたのも間違いなかった。
「H田さんのお店は安いよ。いっぱい食べても5,000円くらい」と怪鳥は言っていた。しかし、さすがにこれで5,000円てことはないよな。と思いながら、お金を払う段のことはよく覚えてないが、どうやらわたしは本当に5,000円しか払わなかったみたい。
案の定、お会計は1万円くらいだったようだ。
しかし、これだけおいしいものを食べればそれくらいはいく。いやいやむしろまだまだ安い方だろう。
怪鳥とTさん、そしてH田さんに別れを告げて東急線に乗り込んだ。背広の内ポケットに文庫本が入っていた。開高健さんの「ベトナム戦記」(朝日文庫)。Tさんは開高さんが呼んだのかもしれない。
そう思って家路に着いた。
「鮨職人」と紹介はされたが、その風貌はそのイメージに直結しなかった。
大柄な体躯と豪放な物言いは職人の寡黙さと繊細さからは程遠かったのである。
ともあれ、そんなイメージを持っていたものだから、怪鳥からH田さんのお店に連れて行って貰い、彼の黙々と仕事をする姿を見たときはかなり驚いたのだった。
学芸大学の駅を降りてすぐ、少し雑然とした一角に清々しい店構えでその店「しお」はたたずんでいる。聞くところによると、なかなか予約すらもとれないらしい。雑誌「東京カレンダー」(アクセス・パブリッシング)でH田さんは、「期待の若手」として誌面を飾っているのだという。
とにかく、今目の前でてきぱきといい仕事ぶりを見せる人は、ちょうど一月前に1塁を守り、大声を出していた人と全くの別人のようだったのである。
「しお」は満員だった。
カウンターだけの8人も入れば、いっぱいになってしまう小さな店。だから、お客とH田さんの距離は近い。お客の会話に気さくなH田さんが、応える。お店の雰囲気は極めてなごやかだ。
まずは瓶ビールから。
銘柄はキリンのハートランド。
いやはや、なんとも清々しい。
清々しい、と言えば、お店全体が実に清潔で清々しい。
カウンターの一枚板はバリ島から取り寄せた古木とのこと。
耳を澄ませば、微妙にピアノジャズが流れている。
この清々しい雰囲気をどう表現すればいいのか。
外気の熱帯夜が嘘のように、お店には清涼感が溢れている。
さてさて、ハートランドを空けて、お酒を貰うことに。
怪鳥はいつもここで決まったお酒を飲んでいるという。
銘柄は藤平酒造(合)の福祝。
茶碗のような大きいぐい飲みでなみなみ注がれて出てきた。
そのぐい飲みの可愛いこと可愛いこと。
そして、お酒の優しく、また柔らかいこと。
「嫌いな食べ物はないですか?」というH田さんの配慮で並べられたお酒のアテをつまんで福祝を飲んでいると、怪鳥がおもむろに席を立った。携帯電話が振動したらしい。ひととおり、話しが終わって席に戻ると「知人が来るけどいい?」ということになった。
もちろん、こっちは構わない。
その知人とは、作家椎名誠さんらで構成する「怪しい探検隊」のメンバー、Tさんだという。
「怪しい探検隊」は高校生時分から愛読する大好きな本。そのメンバーの方が来られるとは何たる光栄なことか!
しばらくして、そのTさん汗をかきかき、恵比寿から駆けつけてこられたのだった。
Tさんはサントリーの広報を担当するなど、現在はフリーでマルチな才能を生かして様々なご活動をされているとのこと。だから、Tさんの話しはあらゆることに造詣が深く、また大変興味深いものばかりだった。うっとりと時間を忘れて、話しを聞いていると、いつしか福祝の杯を幾杯もお代わりし、わたしはすっかり人事不省の一歩手前、頭はトランス状態に陥りそうになっている。
そうかと思えば、いつしかカウンターには握りが出されるようになっており、それをつまみながら、またしても次々に酒が進んでいくのである。
握りは、こじんまりとした可愛いそれ。口に入れるとほろりとシャリが砕けて、ほどよく食べられる。大柄なH田さんがこうして繊細に握られるのは、技術とお客への配慮の気持ちにあるのだろう。
しかし、いかん!調子に乗って飲みすぎた。恐らく福祝を4杯は飲んでしまったか。わたくし熊猫が日本酒をこれだけ飲むのも珍しい。それだけ、お鮨とお酒がおいしかったってこと。
しかも、Tさんの絶妙なる話しがまたおいしさに彩を与えていたのも間違いなかった。
「H田さんのお店は安いよ。いっぱい食べても5,000円くらい」と怪鳥は言っていた。しかし、さすがにこれで5,000円てことはないよな。と思いながら、お金を払う段のことはよく覚えてないが、どうやらわたしは本当に5,000円しか払わなかったみたい。
案の定、お会計は1万円くらいだったようだ。
しかし、これだけおいしいものを食べればそれくらいはいく。いやいやむしろまだまだ安い方だろう。
怪鳥とTさん、そしてH田さんに別れを告げて東急線に乗り込んだ。背広の内ポケットに文庫本が入っていた。開高健さんの「ベトナム戦記」(朝日文庫)。Tさんは開高さんが呼んだのかもしれない。
そう思って家路に着いた。
また、「しお」で会えたら最高!
「しお」はどうしてもまた行きたいです。
今度は大金握りしめて。
福祝もホントおいしかったよ。
それは意外!
お鮨は洋酒に合うの?
それとも、怪鳥だけの特製コースがあるの?
新宿コース、楽しみにしてますぜ!
でもこんなお鮨家さんがあるとは知りませんでした!
板前さんって白衣をぬぐと、全然イメージが変わりますよね。
昼間に会ったりすると、いつも行くお店なのに気づかないことがあったりして(汗)。
「あれ?まきこさん!」って声かけてもらってようやく気づいたりします。
しかし、学芸大学に住んでらしたとは、いいですねぇ。
このお店はH田さんが独立されて、最近構えたようですよ。
とにかく、いいお店でした。
きっと、まき子さんも行ってみたら、お気に召すと思います。
元気に韓国で酒飲んでいるみたいじゃないか。
メクチュ。ソジュ。そして、マッコルリ。
うまい食べものに囲まれて、パラどころではないようだな。
土産話し、期待しているゾ。
怪鳥、わたしはバーボンが好きなときはありました。
でも、ウイスキーはやっぱダメだねぇ。
業界団体の懇親会でウイスキー飲む程度。
多分、水割りにして飲むから、嫌なんだろうね。
そうそう、去年シングルモルトの高い奴飲んだけど、気持ち悪くなりました。
お子様なんですなぁ。
サントリーの角瓶が最近のお気に入り。安いけど充分美味いです。
まきこさん、学大に行ったらぜひ覗いて見て下さい。