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※緊急事態宣言、まん延防止等重点措置発出前に訪問。
校了がぎりぎりになったため、原稿データを直接印刷屋に持参することになった。印刷屋は江戸川橋という駅を降りたところにあり、自分は初めてその駅で降りた。データと出力紙を渡して、仕事は終わった。
初めての街。ちょっと散歩してみるか。
少し歩くと酒屋があった。まさか、角打ちじゃないよな。そっと店を覗くと、立って飲んでいる人が見えた。え、角打ち?こんなに容易く角打ちが見つかるとは。
お酒の小売店はいつ閉店するか分からない。また今度来ようと思って行くと、お店がないことだってある。自分は角打ちを見つけた時は迷うことなく、お店に入ることにしている。
その「磯貝酒店」の扉を開けてみた。店内は狭く、通路も充分な広さではなかった。どうしていいか分からずまごまごしていたら、先客はお店の人に「じゃまた」と言って出て行った。自分はその人と入れ替わって、そのスペースにポジションした。
お店はお母さん一人が切り盛りしている様子だった。
冷蔵庫から「一番搾り」を出して、駄菓子を一品貰ってお会計した。
お母さんに、「随分、お店は長いんですか」と尋ねたら、お母さんは饒舌に身の上を語ってくれた。嫁いできた時から時系列で。しかし、何故初対面の自分に、こんな詳細な話しをされるのか。ある意味無防備なほどに。
仕事上のインタビューは、美しい話しの予定調和でしかない。何かに発表されるエピソードは読み手を意識したフィクションの肉付けの上塗りだ。真のリアリティなるエピソードは職業インタビューではなく、通りすがりのシチュエーションの中でこそ、濃度が高くなると思う。しかも、そういうエピソードはおいそれと聞ける機会はない。もしかして、今自分は本当に貴重な時間を過ごしているのではないかと思った。
「一番搾り」をもう一本いただいた。
そこでお母さんの話しは一息ついた。
「あなた、おうちどこなの?」
今度は自分の話しになった。
北区だと言うと、お母さんはあまり馴染みがないと答えた。ここからそう遠くもないが、縁がなければ近くでもなかなか行くこともないし。
齢を重ねて、夜は早く休むようにしているらしい。だから閉店の時間もだいぶ早まっているらしい。
世の角打ちの店主は高齢化の波に晒されている。いつしか、お店を畳むときもくるだろう。激動の時代を生き抜いた酒場人の経験を是非聞いてみたい。まさに一期一会。これもやはり縁なのだと思う。
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