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ロケットニュースの「立ち食いそば放浪記」で「六文そば」が閉店するとの報をきいた。会社から徒歩7分。存在は知っていたが、なかなか足が向かなかった、「六文そば」。4月も下旬を迎えたとある日、店に向かった。
建物はボロい。黄色い看板はくすんで年季が入っている。昔はもっと鮮やかな黄色だったはずだ。「そば屋放浪記」によると、「六文そば」は開店から半世紀が経つという。ボロいはずだ。引き戸はたてつけが悪く、選ばれしものしか開かない。
店を閉店する理由は建物の老朽化によるものらしい。新型コロナウィルスとは無関係のようだ。
食券の販売機など洒落たものはない。口頭で注文する。「かきあげそば」。360円。キャッシュオンデリ。
黒いそばつゆが一際目を引く。岩本町の「スタンドそば」ほど黒くはないが、他他店にはないどす黒さ。このつゆが「六文そば」の「六文そば」たる所以だ。鰹、鯖、鰯で出汁をとり、昔の工法でそばつゆを作っているという。出汁をひいた材料は具体的だが、作り方は非常に曖昧だ。
だが、このつゆが抜群にうまい。やや辛いが、いかにも東京のそばだ。昔は東京のそばといえば、黒いつゆと相場が決まっていた。いわんや、高度経済成長を支えたのは、このつゆだった。
このつゆにマッチするのが、各種天ぷら。その天ぷらはスタミナの源で、やはり、多くの労働者に支持されてきたはずだ。玉ねぎをメインにするかきあげが抜群にうまい。濃いつゆに浸した天ぷらの衣が、何よりも主役のそばを食ってしまった。
あと数日で閉店となる「六文そば」。東京のそばの由緒正しき系譜が、またひとつ消えていこうとしている。
老舗の閉店は物理的なクローズだけでなく、文化や連綿と続く技術の断絶という点でも、大きな損失だと思います。
よく、ニュースとかで「さみしい」という人がいますが、そんは一言では片付けられないものがあると思います。